移民政策が解禁? 外国人労働者の受け入れに必要なこと

日本の課題の解決としての外国人採用

 出入国管理法改正案が11月27日、自民公明両党の他、日本維新の会などの賛成で衆議院を通過しました。実質的な「移民法」ともいえるこの改正案が今国会で成立すれば、2019年4月の施行以降、今まで高度な専門分野に限って認められていた外国人労働者の受け入れが単純労働にまで拡大し、本格的に外国人の受け入れが進んでいく見込みです。

 

 今まで日本は先進諸国では珍しく、移民政策をとってきませんでした。しかし、最近では深刻な人手不足を背景に、外国人労働者の流入が増加しており、OECDの調査によると、2016年には世界第4位となる43万人の外国人が流入しています。

 

 日本が抱える大きな課題は少子高齢化を背景とした深刻な労働力不足。政府は、”骨太の方針(※PDF注意)”で、女性や高齢者の登用、AI・ロボットを活用した生産性革命と、さらなる働き方改革の推進を行い、克服につなげていくとしており、これらの方針と並んで示されているのが「新たな外国人材の受け入れ」です。

 

 骨太の方針では、「高い専門性を有すると認められたものは、在留期間の上限が無く、家族帯同を認める在留資格への移行措置を整備する方向」とし、今回の入管法改正案でも、新たに在留資格として設ける「特定技能」のうち、熟練した技能を有すると認められた「特定技能2号」の資格を持つ人には、同様の措置を認めていく予定です。

 

 この特定技能2号の資格を持つものは、長期の就労が可能で、永住権取得のための要件のひとつを満たせる可能性もあります。政府は移民政策ではないとしていますが、根本的な少子高齢化対策が進まない以上、今後は外国人労働者を実質的に移民として受け入れ、定住させていく可能性は高いといえます。

 

受け入れ準備が進まない日本企業

 厚生労働省によると、平成29年10月の時点で、日本で働いている外国人労働者は約128万人。日本全体の労働人口が6600万人であることを考えると、すでに約50人に1人が外国人労働者となっています。現在でも技能実習生や留学生が多くの業界で働いていますが、今後も外国人労働者が増え続ける可能性を考えると、高度単純の別なく、企業は外国人労働者を受け入れる体制の構築を急ぐ必要がありそうです。

 

 外国人労働者の受け入れが進んでいる例を見ると、最近では、フリマアプリを運営するメルカリが、インド人エンジニアを大量に受け入れたことで話題になりました。日本のIT業界では、人工知能やIoTを開発するエンジニアの獲得競争が激化しており、経済産業省の調査によれば2020年に約37万人、30年には約79万人の人材不足が予測されています。

 

 また、インバウンドの推進により、宿泊・サービス業などで外国文化の理解や語学に長けている外国人材の需要が高まっており、業界で働く外国人材の数は増加傾向にあります。外国人材採用の視点から眺めると、インバウンドの推進が社会資本の整備や外国人・外国文化への理解につながったことで、外国人材を受け入れる素地が日本社会に整いはじめていることも重要です。

 

 このように外国人材の採用は、IT業界やインバウンド関連業界、あるいは技能実習生・留学生を受け入れている製造・小売などの業界に牽引されています。しかし、外国人材を積極的に受け入れている企業がある一方、なかなか外国人材の採用に踏み切れない企業も出ているようです。

 

 マイナビが2018年11月に発表した「企業新卒内定状況調査」によると、外国人留学生を新卒で採用した企業は約1割程度と、人手不足にも関わらず非常に少数に留まっています。

 

 外国人が採用されない理由としては、日本語能力やビザの取得といった能力・手続き面よりも、「現場の受け入れ態勢が整っていない」(43.8%)、「外国人が活躍できる環境が整っていない」(43.2%)といった企業の内部要因を挙げるところが多く、企業内の対応に課題があるようです。20卒の外国人採用予定も「採用する予定」が10.7%、「検討中」が28.8%に留まっています。

 

 同調査によると、調査対象企業の19卒の採用充足率は84.4%で、6割近くの企業が採用を継続しており、売り手市場のなかで人手不足が深刻化しているにも関わらず、外国人採用に踏み切れない現状が浮き彫りとなっています。

 

 せっかくコストをかけて採用した外国人材が、自社に適応できずに辞めてしまうリスクを考えると、受け入れ態勢をどこまで整えていけばよいのか担当者が不安になるのも当然ではあります。日本の企業の同一賃金スタートや昇進の遅さといった雇用慣行に違和感を抱いている外国人材もおり、採用後に定着しないリスクも確かに存在しているからです。

 

 もちろん、しっかりと日本語能力が身についている人材や日本人と常識が似通っている人材が欲しいという本音もあるでしょう。コストをかけて社内の受け入れ態勢を整えるよりも、”日本人と同じような”人材を獲得したほうが、安上がりだからです。

 

 しかし、外国人の採用は、日本人の人材とは違ったメリットをもたらし、企業を新たなステージに引き上げる可能性も秘めています。

 

外国人を受け入れるために

 外国人の採用は単に不足する労働力を埋め合わせるだけではない利点があります。

 

 例えば、ダイバーシティの推進です。外国人材を積極的にサービスの企画・開発、ローカライズなどに活用していくことにより、新たなアイデアが生まれ、今まではリーチできなかったマーケットの新規開拓につながる可能性があります。

 

 また、外国人材の語学力や異文化理解力が、企業のグローバル展開を後押しする大きな力となる可能性もあります。進出を考えている地域出身の人材を採用すれば、現地の市場調査から商習慣のレクチャー、商談などの通訳、渡航する日本人社員のサポートまでさまざまな場面での活躍が見込めます。

 

 もちろん、外国人材のポテンシャルを引き出すためには、社内の受け入れ態勢の整備や採用後のフォローが重要なことは間違いありません。社内体制の整備にかかる困難を乗り越えていく過程で得られる外国人採用・定着ノウハウは、今後、同業他社との差別化を図り、企業の価値を高めていくうえでも大きな財産となるでしょう。

 

 外国人が働きやすいように受け入れ態勢を用意し、外国人採用について積極的に取り組める環境を整備するためも、外国人労働者が自社にもたらしてくれるメリットを前向きに検討していく必要があるのではないでしょうか。