【TOHOKUイノベーター】台湾人にまだ知られていない東北の魅力を発信したい!「東北女子」邱文心さん
今回インタビューに応じてくれたのは、台湾人に向けて東北情報を発信するInstagramアカウント「東北女子」を運営する邱 文心(きゅう ぶんしん)さん。観光業界専門の広告代理店、株式会社デイリー・インフォメーションの東北支社(宮城県仙台市)に勤務しており、業務の一環としてSNSを担当している。会社は元々国内向け広告がメインだったが、近年はインバウンド向けの情報発信にも力を入れたいと考えていた。そのタイミングで入社したのが邱さん。Instagramは2018年4月末に開設。現在は約8300人のフォロワーがいる(2019年10月現在)。
邱さんは台湾出身で、仙台に移り住んだのは大学卒業後。今回は、台湾人でありながら東北情報を発信する彼女に、仕事内容や東北の魅力について話を聞いた。
台湾人に向けて「東北ならではの情報」を発信
—邱さんのお仕事内容を教えてください。
「東北女子」という台湾人向けインバウンドアカウントの運営を行っています。Instagramがメインですが、FacebookとYoutubeのアカウントも持っています。
—Instagramがメインということですが、どのようなことを投稿しているんでしょうか?
東北の様々な場所に行き、撮影した写真や動画を投稿しています。観光地の飲食店やレジャースポットなど会社でお付き合いのあるクライアントのところに行くこともありますが、基本は自分が行きたいと思った場所を訪問しています。完全に台湾人向けのアカウントなので、行先選びの基準は「台湾人が好きそう」なこと。それから、「東北ならではのもの」ですね。特に、桜や雪など季節を感じる景色を撮りに行くことが多いです。投稿するときは、景色だけでなく周辺のお店やレジャー情報なども紹介しています。台湾から東北まで来るのは、遠いですし時間もかかりますから。もしアカウントを見て「ここの景色を見に行きたい」と思ってくださる方がいたら、「ここには他にもたくさんの魅力がありますよ!」ということを伝えたいんです。景色だけじゃなく、食事など他の情報もあったほうが行きやすいと思いますし。運用を始めて3か月ほどは自分で撮影していたんですが、今は専属のカメラマンがいて、写真にもこだわって投稿しています。
—情報はどのように探しているんでしょうか?
インターネットで探しています。台湾の人でも見つけられるものではなく、日本語で検索しないと出てこない情報を特に意識しています。それから、社員から「ここに是非行ってほしい」とお勧めされることもあります。観光専門の広告代理店ということもあって、みんな東北に詳しいんです。
前職の経験を活かし、SNSの担当に
—大学卒業後に日本に来たということですが、なぜ仙台を選んだんでしょうか?
作家の伊坂幸太郎さんが好きなんです。作中に仙台がよく出てくるので、読んでいていつも「仙台に行ってみたい」と思っていました。日本自体好きでしたが、せっかく行くのならば仙台だ、と思って。2013年に伊坂さんが台湾でサイン会を開いたことがあって、私も参加したんです。その時、仙台のことをたくさん話されていて。それもあって、仙台に行きたいという気持ちが強くなりましたね。
—デイリー・インフォメーションに入社したのは、どのような経緯からですか?
2016年6月に台湾の大学を卒業して、仙台に来たのは10月です。台湾の都市部に住んでいたので、地元に比べると仙台は空気が美味しいと感じました。最初に入った会社では、契約社員として英語と中国語のFacebookを運用していました。今と同じように東北の魅力を発信していたんですが、その事業が無くなり1年程で契約を切られてしまったんです。それで転職先を探した時、デイリー・インフォメーションの事業の中に「インバウンド」があったので、台湾人である強みを活かせるかもしれないと思い応募しました。最初は営業職に応募したのですが、入社後1か月ほど経った時「Instagramの運用をしてくれないか」と言われたんです。その時は嬉しかったですね。経験も活かせますし、自分自身旅行が好きなので。東北の魅力を発信する、という仕事ができて良かったと思っています。
—運用を始めてみて、どんな反響がありましたか?
テレビに「東北女子」を取材していただいたことがあります。台湾の友人が「東北女子」を見て秋保温泉に興味を持ったので、一緒に旅行に行ったんです。その時の様子を取材していただきました。最初は宮城県内のみの放送だったんですが、全国、海外まで放送範囲が広がりました。海外で放送を観た台湾人の方が新たにフォローしてくれるなど、反響がありましたね。また、家族がすごく応援してくれていて、私が投稿した場所に行ってくれたことがあります。自分がきっかけになって誰かが動いてくれるというのは、嬉しいですね。
外国人目線で感じる東北の魅力とは
—邱さんが思う東北の魅力とは?
まだ外国人観光客に見つかっていない場所がたくさんある、というところが魅力です。東北の田舎には「日本」を感じる景色がたくさん残っていて見どころがあるけど、観光客はあまりいないですよね。日本が好きで何度も来ている台湾人も多いので、そういう“あまり観光客がいない”ところも好まれるんです。これは、台湾の人にたくさん来てほしい、という想いとは少し矛盾していますけどね。日本に既に何度か来たことがあって、「定番観光地ではなく穴場に行きたい」という方が東北を選ぶ傾向があると思います。あと、雪も東北の魅力ですね。日本人は雪を面倒だと思うかもしれませんが、雪を見たことがない人が台湾にはたくさんいますから。Instagramの投稿も、雪の写真は反応が特に良いです。
—特にお勧めしたいと思う場所はありますか?
全部です!けど、特におすすめしたいのは蔵王の樹氷ですね。雪の経験が少ない台湾人にとって、樹氷に実際に触れるというのが良いと思います。あと、岩手県の岩洞湖で体験したワカサギ釣りも面白いです。穴を開けて釣りをしたんですが、落ちないかと思ってハラハラしました。それから、福島県の三春滝桜も見てほしいですね。
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↑蔵王の樹氷。実際に触れることができる
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↑岩洞湖でワカサギ釣りをする様子
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↑福島県の三春滝桜。多くの観光客が訪れる
—では、既に台湾人に人気があるのはどんな場所ですか?
岩手県の猊鼻渓は元々人気があります。船頭さんの歌を聴きながら船に乗れるんです。こういうのは日本語が分からなくても楽しめますよね。なにかの体験ができるようなスポットは、人気です。
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↑猊鼻渓で船に乗る様子。リンク先から、実際の歌を聴くことができる
—最後に、今後の目標を教えてください。
上司からは、フォロワー1万人を目指そうと言われています。そのくらいフォロワーがいれば、もっと影響力を持てるから、と。個人的には、東北を全部まわりたいです。まだ行ったことがない場所がたくさんありますから。季節によって魅力も違いますし、1つのスポットでもいろんな季節に行きたいです。それから、まだ観光地になっていないような農村などにも行ってみたいですね。もっとフォロワーを増やして、たくさんの人と出会って、今よりも深い取材ができるような人になりたいです。東北の魅力を伝えていくことは、自分のライフワークになりつつあります。これからも、仙台を拠点に東北の魅力を伝えていきたいと思っています。
【プロフィール】
邱 文心(きゅう ぶんしん)
台湾の大学を卒業後、2016年から仙台に居住。飲食店のアルバイトを経てテレビ局の子会社に勤務後、株式会社デイリー・インフォメーション東北支社へ。現在は「東北女子」を立ち上げ、特に台湾人に向けて東北の魅力を発信している。
・Instagram:https://www.instagram.com/tohoku_girl_official/?hl=ja
・Facebook:https://www.facebook.com/tohokugirl/
・Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCxoD1fa-3rtsEN7e9q3aHxQ
【LocalBook編集部後記】
東北の魅力を語る邱さんからは、良い意味で「外側の目線」を感じました。住んでいると、慣れもありその地域の魅力を見失ってしまう人が多いですが、邱さんは台湾人の目線を忘れず、「どうすれば魅力が伝わるか」を真剣に考えています。東北には地元出身者でも知らない魅力がまだまだあります。個人的にも、「東北女子」の活躍に今後も注目していきたいと思います!(ライター:堀越愛)