eスポーツを福祉の現場に活用!秋田県「ほくと」に勤める若狭さんがグランプリを受賞

 2022年3月15日(火)、『社会福祉 HERO’S(ヒーローズ)TOKYO 2021』がオンラインで開催された。全国社会福祉法人経営者協議会(以下、全国経営協/東京都千代田区)が運営する「日本一の福祉人(社会福祉をチェンジする情熱にあふれる人)」を決める大会で、この日は全国から選抜された6人のファイナリストが生中継で参加。社会福祉に対する熱い想いと、介護や保育・障がい者支援など地域での実践内容を、事前収録のプレゼン動画で披露した。

 社会福祉の第一線で活躍する若手職員を表彰する「ベストヒーロー」賞を受賞したのは、若狭利伸さん(32歳)。若狭さんは、秋田県の社会福祉法人北斗・障がい者支援施設「ほくと」に勤務している作業療法士だ。有識者6人と、オンライン中継を視聴している大学生・専門学生らから最多得票を集め、若狭さんが日本一の栄冠を掴んだ。

 若狭さんがプレゼンしたのは、「eスポーツ」を活用したプロジェクト。2020年1月から、入居している利用者のリハビリに活用しているという。施設のデイサービスで一般的なのはカラオケや料理だが、若狭さんは業界の常識を破り、eスポーツを活用。脳性マヒや脊髄損傷の方とともに、格闘やリズム・パズルのコンピューターゲームを楽しみながら、“頭と体のリハビリ”ができるプログラムを実施しているという。利用者対抗の大会を開催するほか、他施設との交流を目的としたオンライン対戦、さらに2021年1月には、利用者がeスポーツの全国大会に初出場を果たした。またコロナ禍による面会制限中もYouTubeを活用した生配信を行い、利用者の家族からチャットで声援を送ってもらうという取り組みも実施したという。

 eスポーツを新しいリハビリとして確立することを目指す若狭さんは、「障がいの有無・年齢・居住地関係なく全国の人との交流ができるeスポーツは、障がい者のQOL(生活の質)を上げる画期的なツール。導入のノウハウを県内外の他施設や教育機関、地域コミュニティに普及したい」としている。また、大会の受賞スピーチでは「福祉の仕事というのは、本当に自分の職場の中だけではなく、自分の住んでいる県だったり、大きく言えば世界とつながれるような、すごいおもしろい職業だと思って、これからも今までどおり、自分のやってきた活動を続けていって、どんどん、どんどん発展させていきたいなと思います」と未来への抱負を語った。

 『社会福祉ヒーローズ』が創設されたのは、2018年3月。今年で4度目の開催となる。全国の社会福祉法人から20~30代の若手を募り、「社会福祉の世界を変えたい・魅力をたくさんの人に伝えたい」という熱い想いを持っているか等を選考基準に審査、受賞者を決定。今回のファイナリスト6人の平均年齢は、33歳だという。

 コロナ禍で、福祉の仕事は「エッセンシャルワーカー」として注目を集めた。また、「誰ひとり取り残さない」をスローガンに掲げるSDGsの中でも、福祉業界の果たす役割が期待されている。しかし一方、介護の現場では深刻な人手不足が懸念されている。2025年には、全国で約38万人もの人材が不足すると言われているという。『社会福祉ヒーローズ』を開催する全国経営協が目指すのは、2025年度までの「社会福祉法人における離職率10%以下」の実現。本イベント開催の背景にも、「福祉の仕事の魅力を若者に伝えることで、離職率を改善し、人材確保につなげたい」という考えがある。福祉の魅力を発信する本賞を通じ、今後も現場で働く職員、また未来の福祉を担う学生に目標や奮起を与えたいとしている。

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