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【TOHOKUイノベーター】「新しい働き方を多くの人に伝えたい」機械設計、デザイン支援、ロボット開発、人材育成、コンサルタント事業を展開しているHMK DESIGN代表 三浦博文さん

 今回インタビューに応じてくれたのは、人材育成、機械設計、技術・経営・教育コンサルタント、デザイン支援の4つの分野で幅広く事業を展開しているHMK DESIGN代表 三浦博文さん。2008年に仙台市で機械設計の請負事務所として開業以来、インターンシップの受け入れを実施し、2020年までに70名以上が参加した実績や、製品設計塾としてHMK Schoolを開講し、多くの人材スキル向上に寄与してきた。HMK DESIGNの特徴は、若いメンバーを中心とした個人事業主の集団であること。そんな特徴的な働き方を組織で実践している三浦さんに、代表としての想いや東北に貢献したいことを伺いました。

HMK DESIGN 代表 三浦博文さん

紆余曲折して辿り着いた理想の働き方

– 現在の仕事について教えてください

 HMK DESIGNという事務所を運営しています。事業内容としては、人材育成、機械設計、技術・経営・教育コンサルタント、デザイン支援の4つの分野を軸に事業展開しています。また、これらの事業をスタッフ同士が連携し、分担して仕事を担っています。元々は、2008年に仙台市で機械設計の請負事務所として開業しました。その後、2010年から「製品設計塾」をスタートし、2012年にスタッフの受け入れができる準備を始めました。同時に学生インターンシップの受け入れも開始し、2020年までに70名以上が参加した実績があります。

 その他にも2013年より「製品設計塾」を含め、HMK Schoolとして、手に職を身に付けるための塾を開講しています。拠点としては2014年に郡山分室を開設し、2017年にはインドからインターンシップに参加した4名で「HMK R&D」もスタートしています。現在では、島根県で「HMK Viz」も開業し、全国にHMK DESIGNグループを広めています。

– 起業をしたきっかけはなんですか?

 私は21年間、大手人材派遣会社の技術者として大手メーカーを中心に10社を経験しました。その経験の中で、派遣技術者の場合、年齢が高くなれば派遣期間も短くなり、同じ派遣先で働き続けることが難しい現実や、県を跨いだ転勤を受け入れなければ、会社を辞めなければならない実態を憂うようになったのがきっかけの一つです。
また、東北の中小企業には技術力が高く、素晴らしい会社が多いのですが、その多くが大手企業の下請け会社となっている実態があります。自社製品を設計できるパートナーがいれば、下請け会社から脱却できるのではと思い、起業を志すようになりました。

– どんな会社をつくろうと思ったのですか?

 複数の会社を経験する中で、会社の良い面と悪い面をたくさん見てきました。中でも仕事の納期が先行し、残業が続くことで体調を崩してしまう人や、たまたま同じチームの人と相性が合わず、人間関係に悩んでいる人などが多いことに疑問を持ちました。スタッフ全員が健康でストレスフリーに働ける、そんな良い面を取り入れた新しい働き方にできればと思い、そんな会社をつくろうと思いましたね。

 HMK DESIGNは個人事業主の集団ですが、外部に対しては会社組織としてチームで対応しています。そのため、一般的なフリーランスのイメージのように、個人で仕事をやり遂げるのではなく、スタッフがサポートし合う働き方ができるようにしています。

 また、毎年インターンシップを実施して学生を多く受け入れることで、学生の方に、新しい働き方を体感してもらっています。「こんな働き方もある」と知ってもらい、卒業後は会社に入社するだけでなく、自分らしく働ける選択肢の一つとして弊社のようなフリーランスが集まる会社もあることを、感じ取ってほしいと思っています。

 実はインターンシップに参加した学生がHMK DESIGNの働き方に共感し、スタッフとして残ってくれてもいます。彼らには望む働き方を実現し、弊社の想いを伝えていってほしいですね。

積極的にインターンシップに参加している学生

– 仙台で会社を営んでいる理由はなぜですか?

 20代の若手の方を中心に、地元に残って仕事をしたい人や、Uターンあるいは2拠点生活をする人など、東北で働き方の選択肢を増やしたいと思っているためです。仙台だけでなく、東北のどの県にいても機械設計やデザインの仕事ができる環境を整えていきたいと考えています。

 収入面においても、若手の方がより多くの収入が得られるよう、案件の獲得等で工夫をしており、働き方のメリットだけでなく、収入面で首都圏よりも多くなるように日々努力しています。どんな田舎に住んでいても最先端の仕事ができ、高収入を得られるようになれば若い方の定着率が上がり、東北の過疎化が進むことを少しでも抑えられると考えています。

「人」と「働き方」を大切にした新しい働き方を伝えていきたい

– お話を聞いていて、三浦さんが大切にしたい価値観は「人」と「働き方」のような気がします。

 そうですね。「人」と「働き方」の価値観を軸に、今のHMK DESIGNができています。例えば、新しい従業員に入ってもらう時に、「仕事はできるけれど人柄は悪い」、または「仕事はできないけれど人柄が良い」、どちらの方に入ってもらうかでいうと、「仕事はできないけれど人柄が良い」方に入ってもらいたいと思っています。そのような方でも、1〜2年こなすと自然と仕事ができるようになり、「仕事ができて人柄が良い」人になれると思っています。この基準を設けている理由として、私が技術派遣で様々な現場を通し、仕事はできるけれど、人柄が悪い人と働くとストレスが溜まるなど、心身に悪影響が出ると気付きました。また、HMK DESIGNでは、現スタッフが「一緒に働きたい」と合意が無い場合、スタッフになることはできません。そのため、スタッフ感で、お互いがどんな人物か分かった上でサポートし合いながら協働し、人間関係の悩みが無い状況で働く環境作りを徹底しています。

スタッフ全員で休憩タイム。コミュニケーション円滑化に欠かせない一時。

– 人柄の良さが、スキルの有無に相関性があるのかもしれませんね。

 そうかもしれないですね。結果的に、95%のお客様から継続して案件をいただくことができています。営業をせずとも、継続して仕事が来るモデルを確立できているので、素晴らしいスタッフに恵まれた環境だと思っています。

– 最後に、三浦さんの今後の夢があればお聞かせください。

 まずは、20代の若い方がHMK DESIGNを続け、自分が会社を変えていく、そんな当事者意識を持ち続けた会社組織になって欲しいと思っています。その実現のために、スタッフに権限委譲を始めています。例えば、学生のインターンシップの企画や運営は、以前は私が中心に担っていましたが、今はスタッフに任せています。将来的には、私自身として代表という肩書きは持つかもしれないが、スタッフ全員が案件獲得やお客さんとの関係維持などを含め、自主的に動けるような風土をつくっていきたいです。

 その他、現在は仙台をメインとしていますが、郡山、島根、インドにもスタッフがいますので、今後は日本のどの都道府県に行ってもHMKグループのスタッフがいるようになったら嬉しいです。当然海外の拠点が増えることも考えています。ただ単にグループとして大きくなることを望んでいるわけではなく、HMKグループが提案している新しい働き方をする方が増えて欲しいと願っています。望んでいない転勤や退職をすることなく、同じ屋号で生涯働くことができるようにスタッフ全員が協力しあえるようなグループになることを望んでいます。個人事業主としてのイメージを大きく変え、個人事業主だからこそできることを広めていきたいと考えています。

【プロフィール】
三浦博文(みうら ひろふみ)
岩手県一関市出身。早稲田大学専門学校 機械科、法政大学や東北大学 工学研究科などを経て、機械設計者として働く。幾つかの現場を経て、2008年にHMK DESIGNを設立。現在は人材育成、機械設計、技術・経営・教育コンサルタント、デザイン支援の4つの分野を軸に事業展開している。

HP:https://hmk-d.com/

【LocalBook編集部後記】
 今回取材させていただいた三浦さんは、「みんなが幸せになるための働き方を一緒に考えたい」という熱い想いを持っている方だと感じました。三浦さんの想いや考え方を通して、新しい働き方が実現し、人々の生活がより自由に、豊かになっていく、そんなイメージを持つことができた取材でした。(ライター:小山 美穂)

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