【仙台市オンラインイベント】地域スタートアップエコシステムの最前線 ~仙台市特集~
概要
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社が運営する Morning Pitch Channel によるイベント「地域スタートアップエコシステムの最前線 ~仙台市特集~」が、9 月 29 日、オンライン上で開催された。この取り組みは、各地域のスタートアップ創出へ向けた取り組みをキーマンとのトークを交えながら紹介するもので、今回で 6 回目。2020 年 7 月に、内閣府が推進する「スタートアップ・エコシステム拠点都市」の「推進拠点都市」に選ばれるなど、起業家への支援をさらに強めている仙台市と成長を続ける在仙スタートアップ企業の取り組みが、平日夕方にもかかわらず集まった 100 名を超える聴講者に対して紹介された。
担当者が語る、仙台市のスタートアップ・エコシステムの特徴
第 1 部の開始に先立ち、有限責任監査法人トーマツ 仙台事務所の戸内氏と仙台市経済局 産業振興課の白川氏の 2 名より、仙台市のスタートアップ支援の特徴について紹介が行われた。
紹介の中では、仙台市のスタートアップ支援の特徴が「社会起業家によるソーシャル・イノベーション創出」「大学発ベンチャーによるテクノロジー・イノベーション創出」「海外提携都市との連携によるグローバル化」の 3 点であるとした上で、課題先進地に求められる多様な起業家を支える受け皿としての役割をスタートアップ・エコシステムが担っていることが語られた。ゼブラ企業のような課題解決型起業家のビジネスモデル構築から、国内外の地域に対するビジネス展開まで応援する姿勢は、課題先進地ならではと言えるだろう。
仙台市がこのような充実したスタートアップ支援を行うようになったのは、2011 年の東日本大震災以降、「社会課題を解決したい」「地域を牽引する事業を創っていきたい」といった大きな志を持つ起業家の自然発生が契機となっている。白川氏はこのような起業家を「ロールモデル起業家」とし、支援を通じて「若い人が就職したくなるような」地域を牽引する企業が増えることで首都圏への人口流出を防ぎ、新しい仕事や働き方による街のにぎわいや魅力の創出に繋げたいと、持続可能な都市の実現に向けた起業家への想いや期待が語られた。
仙台市長が考える、スタートアップ・エコシステムが創る「未来の仙台」
第 1 部では郡 和子仙台市長より、仙台市のスタートアップ・エコシステムを通じた未来の仙台のビジョンについて、 次の 4 つのトピックより語られた。
最初のトピックは「現在と今後の起業家支援体制」について。郡市長は、現在の起業家支援の内容として「Tohoku Growth Accelerator」と「Social Innovation Accelerator」の 2 つのアクセラレータープログラムと、「仙台未来創造企業創出プログラム」による地元企業の上場支援を紹介。総務省の調査で政令指定都市における新規開業率が 2 位になったことなど、起業に対する裾野が確実に広がっていると自信を見せた。今後の起業家支援については、起業家の成長により焦点を当てることが今後の重要なポイントとした上で、経産省および東北経済産業局との連携プログラム「J-Startup Tohoku」と、「せんだい都心再構築プロジェクト」の中でのスタートアップ拠点整備を民間企業と合同で進めていくことの 2 点が進行中であると紹介。ソフトとハードの両面から起業家へのサポートを強めていく姿勢を鮮明にした。
2 つ目のトピックは「仙台市が圏域を越えた起業家支援を行う目的」について。この話題に対し郡市長は、「仙台だけ経済成長を遂げれば良い訳ではない」という東北地方唯一の政令指定都市としての責任感と、「東北の各都市の衰退が仙台の衰退に直結する」という都市の存亡への危機感が原動力となっていると、仙台市で起業家支援が求められる背景を強く語った。その後、現在の起業家支援の先には「多様な人たちが仙台に集い、地方へ広がっていく」仙台市をハブとした起業家コミュニティの形成・拡大があることを紹介。圏域を越えたコミュニティを形成することで、東北から多様なイノベーションと地方を牽引する成長事業の 2 つを創出し、仙台市だけでなく東北地方全体の幸せに繋げたいと、仙台市のスタートアップ・エコシステムが描く世界観を唱えた。
3 つ目のトピックは「仙台市のスタートアップ推進都市としてのポテンシャル」について。郡市長は、仙台市が「人口 100 万人都市という恵まれた市場規模」「さまざまな地域的・社会的課題が存在」「高度な都市機能と研究機関、加えて自然が調和するビジネス拠点としての優位性」「市民活動が活発な都市文化」という 4 つの地理的特性が、社会起業家やスタートアップを目指す起業家にとってメリットになると親和性を強調。震災以後続いてきた課題解決型起業家によるムーブメントを持続させることにより、仙台が持つ都市としての総合力を高め、「課題先進地」から「課題解決先進地」「ソーシャル・イノベーションの “首都”」にしたいと、市政のトップとしての意気込みが語られた。
ラストは「未来の仙台市に向けたビジョン」について。最後の話題に対して郡市長は、現在策定に向けた準備が進められている仙台市基本計画のスローガン「The Greenest City」の「Greenest」には若々しい印象を連想させるだけでなく、「生態系の象徴としての『森』」という意味合いから、未来の仙台を「起業家が産まれ育む『森』にしたい」とスタートアップ・エコシステムの必要性を改めて主張。未来の仙台に向けた自身の想いを共有し、第 1 部を締めくくった。
在仙スタートアップ企業 3 社のトップが語る、コロナ禍を生き抜く企業の条件
第 2 部では zero to one 竹川氏、シグマアイ 伊勢氏、ボールウェーブ 赤尾氏、ニューロマジック 木村氏によるトークセッションが行われた。トークセッションでは「なぜこの地域でスタートアップなのか」「大学の研究シーズをスタートアップに繋げるには」「ビヨンド・コロナへのチャレンジ」の 3 テーマが掲げられ、スタートアップ企業から見た仙台市の魅力や、コロナ禍における新たなチャレンジについて語られた。
最初のテーマ「なぜこの地域でスタートアップなのか」では「東北大学発の素晴らしい技術を世に出したい、という想いが一番にあった」と語る伊勢氏に対し、赤尾氏は「あらゆるプロセス技術が集結する仙台市の “密度” が、自社の事業に適していると感じた」、竹川氏は「行政からの手厚いサポート体制に加えて、衣食住にかかわる環境の良さが魅力」と、それぞれ第 1 部で紹介された仙台市の地理的特性をメリットとして挙げていた。
2 つ目のテーマ「大学の研究シーズをスタートアップに繋げるには」では「研究成果をベースとするスタートアップは、研究者との信頼関係が絶対」「大学教授だけの起業は難しいため、一緒に歩んでいく気概のあるメンバーを見つけることが大事」と創業期メンバーの重要性を語った伊勢氏。それに対して赤尾氏は「シーズやニーズのマッチングありきではなく、“発見” を顧客の役に立つレベルまで連れて行くことが大事」「ピボットすることを恐れず、あらゆる変化を受け入れること」とディープテックの事業化の難しさを語った。大学発ベンチャートップ両名から各企業の色が窺えた一方、竹川氏は自社が「産業界と研究機関の間を取り持つポジション」にあると定義。東北大学の大野英男総長が 2018 年に発表した「東北大学ビジョン 2030」が、地域発のイノベーションを加速させる先導的な取り組みであると紹介するとともに、自社のようなポジションの企業が生き残る道として、産業界と研究機関の双方に対して自社ができることを明確に発信することが大事であると持論を述べた。
最後のテーマ「ビヨンド・コロナへのチャレンジ」では、竹川氏からは「リカレント教育 × 高度 IT スキル学習」、伊勢氏からは「出社・在宅を考慮したスケジュールの最適化 × 量子アニーリングマシン」、赤尾氏からは「空気質モニタリング × ボール SAW センサー」とそれぞれ自社の事業・技術による社会課題解決の方向性が語られた。3 名ともコロナ禍の現在を事業拡大の好機として捉えている点で共通しており、その姿勢は仙台市が起業家たちに期待する「未来の仙台市の牽引役」としての片鱗が感じられる、頼もしいものであった。(ライター:菊池)
「地域スタートアップエコシステムの最前線 ~仙台市特集~」イベント概要
■ 開催日
2020 年 9 月 29 日(火)
■ 主催
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 Morning Pitch Channel
■ 登壇者(敬称略)
<オープニング>
•有限責任監査法人トーマツ 仙台事務所 戸内 和信
•仙台市経済局 産業振興課 白川 裕也
<第 1 部>
•仙台市長 郡 和子
•株式会社 zero to one 代表取締役 CEO 竹川 隆司 (モデレーター)
<第 2 部>
•株式会社 zero to one 代表取締役 CEO 竹川 隆司
•株式会社シグマアイ 代表取締役 伊勢 賢太郎
•ボールウェーブ株式会社 代表取締役社長 赤尾 慎吾
•株式会社ニューロマジック 取締役執行役員 木村 隆二 (モデレーター)
<司会進行>
•デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 地域ユニット 松島 香織
■ イベント申し込みページ(現在は申し込み終了)
https://eventregist.com/e/DD_06