ドローン輸送による物流課題の解決へ向けて―岩手の山岳地帯で運送の実証実験が成功
株式会社東北ドローン(宮城県仙台市)は、東北電力ネットワーク株式会社岩手支社通信センター(岩手県盛岡市)からの依頼を受け、岩手県内の無線中継所においてドローンを活用した物資輸送の実証試験を実施した。本試験は、急勾配の山道での人力運搬作業を効率化し、安全性を向上させることを目的としている。
東北電力ネットワークでは、電力の安定供給に必要な専用の保安通信を確保するため、定期的に通信電源用バッテリーや燃料などを人力で運搬している。しかし、こうした作業には転倒や滑落、物資の落下といった危険が伴い。作業者の身体的負担や運搬効率低下の課題があった。これらの解決策として効率的で負担の少ない輸送手段確立を目指し、東北ドローンは物資輸送専用ドローン「DJI FlyCart 30」を導入し、ドローンによる物資輸送の実用性と安全性を検証する実証試験を実施した。
本実証試験の結果は、ドローンにウィンチシステムを搭載した空中輸送による、地形や環境の影響を受けずに高密度に樹木が生い茂る着陸困難な場所でも正確で安定的に運搬し、着陸せずに物資を受け渡す効率的な物資輸送が実証された。これにより、転倒や滑落のリスク低減や急勾配の山道を往復する必要もなくなった。輸送時間も、空中輸送により作業が30分未満に短縮された。
本実証試験により、ドローンのフライト時間が約17分、充電時間が約1時間であることが確認された。短距離および中距離の輸送ではドローンの優位性が明らかになったものの、長距離輸送における継続運用には課題が残る。
今後の改善点として、複数台のドローンを同時運用する体制の構築、効率的な運行計画を策定するための運行管理システムの導入、バッテリー交換式運用や急速充電技術の採用などが挙げられる。これらの対策を講じて、ドローンの稼働率向上、運搬作業全体の効率化を実現することを目指す。
また、空中輸送による様々な環境での課題解決も目指しており、山岳地帯や災害現場における迅速な物資輸送手段として、救援活動の効率化や支援範囲の拡大。さらに、物流業務最適化や安全性向上を図った企業向けの輸送ソリューション提供、ドローンの運用管理や導入サポートなどサービスソリュ-ション開発も視野に入れている。