• HOME
  • TOHOKUイノベーター , 宮城
  • 【TOHOKUイノベーター】「関わる全ての人を全力で応援する」東北最大級のシェアオフィス「enspace」責任者 可野沙織さん

【TOHOKUイノベーター】「関わる全ての人を全力で応援する」東北最大級のシェアオフィス「enspace」責任者 可野沙織さん

 今回インタビューに応じてくれたのは、エンライズコーポレーションが運営する仙台のシェアオフィス「enspace(以下エンスぺース)」で責任者を務める可野沙織さん。東北でチャレンジする人々が集まるエンスペースでお仕事をしている可野さんに、事業への思いや仕事をする上で大切にしていることをお聞きしました。

【TOHOKUイノベーター】「関わる全ての人を全力で応援する」東北最大級のシェアオフィス「enspace」責任者可野沙織さん 可野さん写真

「enspace」の責任者を務める 可野沙織さん

 

東北最大級のシェアオフィス・コワーキングスペース

―エンスペースについて教えてください。
 エンスペースは新たなビジネス創造を目指す人たちのシェアオフィス・コワーキングスペースです。東北に新しい仕事をもたらしてくれる企業を誘致するためのシェアオフィス、シェアオフィスに入居する企業同士が交流するためのコワーキングスペース、そしてそこから生まれたビジネスでイベントを開催するための会議室、この三つの機能をエンスペースは持っています。それから、今年の7月1日にはIT業界を目指す人々を対象としたプログラミングスクールも開校しました。

―可野さんがエンスペースに勤めるきっかけとなった出来事はありますか?
 知人がIT業界の関係者を集めたバーベキューイベントを開いて、そこで今の会社の上司に当たる吾郷(吾郷克弘 エンライズコーポレーション代表取締役CEO)と知り合ったことがきっかけです。吾郷はエンスペースの責任者を探していて、その条件が「アクティブに動ける東北出身の女性」だったので、一緒にやってみないかというお話をいただきました。いろいろと考えていくうちに、吾郷が目指していることと私が東北でしたいことは同じなのではないかと思い、責任者になる決断をしました。私はいま渉外担当をしていますが、提携業務やイベントの開催相談、企業誘致、エンスペースの広告活動など幅広く仕事をさせてもらっています。また、館内ではエンスペースの学生インターンの指導や教育もしています。

エンスペースのふたつの「場」

―エンスペースの役割を教えてください。
 東北で頑張る人々を応援する「場」になっています。私たちのお客様は、起業して間もない方や東北は知らないけれどここでチャレンジしようと集まってきた方ばかりです。東北は価値経済ではなく信用経済。地方は特にそういう傾向が強いと思いますが、何をするかではなく、誰とするかが大事になります。相手を信用して初めてビジネスができる。密に連携がとれるようにもなる。これは紹介などを通じて達成できるものだと思っていて、私たちは意識して入居者の方と東北経済のキーパーソンの方をつないでいくことをお手伝いしています。

 また、スタートアップの方々はいつも孤独に走っている状態です。成功のビジョンを抱いて頑張っていますが、毎日それだけだと人間誰でもしんどいですよね。欲しいのは仲間です。だからコミュニケーションは仲間だと思ってもらえるようにフランクにしています。私たちも地域の人も、お客様のビジネスが成功してほしいと思っていますし、そのためには、息抜きしやすく、集中して仕事に取り組める環境が大事ですから。もちろん、お客さまなので距離感には気をつけます。

 もう一つは後から追加したものですが、学生インターンの教育機関としての「場」になっています。当初、エンスペースは社会人のみで運営するイメージでいました。エンスペースを立ち上げる前に、インターン生は募集しないのですか?という質問をもらっていたのですが、最初は正直、学生は学生クオリティでしょって思っていました。でも、学生から熱意を伝えられて、試験的に採用して、学生たちと関わっていくなかで、学校生活と社会人生活は本来密接につながるべきことなのではと思い、それを実現する場としてエンスペースが役に立つかもしれないと思うようになりました。サービス提供者なのでクオリティの担保は絶対に必要です。学生だとどこまで出来るかわからない面もある。でも、どこまで出来るかわからないけど、彼らと一緒にもがいていくのも、ひとつのあり方として正しいかもしれないと思えてからは、ほぼすべてインターン生で運用できる体制に切り替えています。

東北の末端までビジネスを行き届かせたい

―エンスペースのビジョンはなんですか?
 エンスペースが仙台にできた目的は、端的にいえば東北で頑張る人を応援するためです。また、エンスペースがここで活動していった先に描いているビジョンとしては、「末端までビジネスが行き届いている東北」をイメージしています。

―東北の末端までビジネスが行き届く、ですか?
 ええ。私は宮城県の登米市という田舎町の出身で、自分のしたい仕事が地元にないので仙台に出てきた人間です。私としては好きな街で好きな仕事をしながら祖母と一緒に登米に住むのが理想で、そういう視点から見ると、田舎のほうにはそもそも産業がなく、働き方や生き方を選べないことがすごくもったいないと感じています。また、都会と比べると入ってくる情報にすごく格差がある。社会に出たときにどのように働くのか、どんな選択肢があるのかをそもそも田舎にいると知らないことが多いと思います。将来のことを考えましょうといくら学校で習ったとしても、周りはほとんど農家だったり、スーパーの店員さんだったりするので、具体的に幅広く考えることができません。そういう場所で、ちょっと変わった仕事をしている人が身近にいれば、最初から仕事の選択肢の幅も広まりますよね。そして、そういう仕事を極めたいと思ったら海外や東京に出ればいい。でも、例えば登米に住んでいてもできることはあるはずなので、その場所に残る選択を次世代の人ができる環境を作るために、東北の末端までビジネスが届くようにしたい。だからこそ、まずは東北の核となっている仙台でエンスペースというビジネスをはじめて、ここで爆発した火の粉が東北の末端まで届くようなイメージで盛り上げていこうと思っています。

思いやりを大事にしたい

―可野さん自身が、お仕事において大切にしていることを教えてください。
 日本人はネガティブすぎると思って、お金を貯めて海外に行ったことがあります。海外に行けば、心機一転してやり直せると思ったからです。でも、実際に海外に行くと、ただ逃げたかっただけだなと気づきました。私はどれだけ気分よく過ごしていても、日本ではありえないようなちょっとしたサービス提供時のコミュニケーションの仕方で不快になることも分かりました。そういう経験からホスピタリティや思いやりを大事にして生きたいと思っています。

 それから、小さいころの体験もあります。小学生の頃の私はもともと「優等生」という感じでしたが、悩み事があって、よく授業さぼって学校の屋上に行く時期もありました。こういう少し苦しい時期に、担任の先生が、本当はこういうことをする子じゃないよって言ってくれましたが、ありがたい反面、私はどういう風に思われているんだろうとも思ったんです。例えば、笑顔で振るまっていても本当は寂しいときもあるじゃないですか。でも、そういう感情に自分自身が気づけないし、向き合えないときもある。私自身、そういう気持ちを見てもらえずに寂しさを感じた経験があるので、私は向き合っている人の本当の気持ちが何なのか見るように心がけています。「私もどうすればいいかわからないのに」「私のことを知らないくせに」と感じた経験があるからこそ、いま向き合っている人が何を望んでいて、何に喜び、何に悲しむのかをしっかりと感じて、相手がしたいことを踏まえながら、こうなれば素敵なんじゃないかと思うことを提案していきたいですね。

エンスペースの今後の展望

―最後に、今後力を入れて取り組んでいきたいことを教えてください。
 大きく二つあります。活動範囲の拡大と人材採用です。地域×Techというところで、エンライズコーポレーションが持つサービスを広げていくためにも、私たちの活動範囲を広げていかなければならないと思っています。いまは仙台だけですが、活動拠点を東北全体、札幌、福岡など全国にも広げていきたいです。そして、海外展開も視野にいれています。「東北から関東圏へ」という枠だけで考えるのではなく、「東北から世界へ」という導線をつくっていく予定です。

 人材採用については、入居企業の期待に応えられる体制づくりを進めるためにも強化したいと考えています。エンスペースは朝9時から夜10時まで営業していて、入居企業は24時間利用できます。夜に活動される方も昼に活動される方もいるので、昼夜を問わずスタッフを配置して満足度を高めていきたいですね。

 他にも、先ほどお話しをした通り、入居企業と地元企業をつなげていく活動などを進めます。これらの活動を通じて、東北で頑張る人を全力で応援し、東北の末端までビジネスが行き届く未来を目指したいと思っています。

【プロフィール】
可野  沙織(かの さおり)
宮城県登米市出身。IT企業にて、様々なクライアントのカスタマーサポートセンターの立ち上げ、人材採用・運用構築・サービス改善などの業務に責任者として従事。人材育成や組織マネジメントの経験を活かし、宮城県内を中心に若者向けのコミュニティ活動も行っている。株式会社エンライズコーポレーションでは、新規事業であるエンスペースのコミュニティマネージャーとして参画。

【LocalBook編集部後記】
 今回取材させていただいた可野さんは地元に対する思いが強い方で、関わった人のために本気でお手伝いできることがないか探そうとする姿勢にはとても熱意を感じました。エンスペースが中心となってビジネスが広がり、東北のどこにいても選択肢があり、自分のやりたいことができるようになる日が、東北から世界にビジネスが広がる日が、早く来てほしいと切に感じました。

ピックアップ記事

関連記事一覧