【宮城】サステナブル・シーフード店「ふぃっしゃーまん亭」仙台国際空港にOPEN!衰退する魚食文化にDXで流通革命を巻き起こす

 「ふぃっしゃーまん亭」を運営する株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング(宮城県石巻市)は、三陸の水産業から「新3K = かっこいい・稼げる・革新的」確立を目指し、システムのDX化や担い手の育成プロジェクトなどを手がけている。仙台国際空港への出店における背景と今後の展望について、店舗マネージャーの吉岡康貴氏にお話を伺った。

三陸の牡蠣と海鮮丼を楽しめる食事処「ふぃっしゃーまん亭」が4/12、仙台国際空港2Fにオープン。一見、普通の飲食店のようだが一味も二味も違う。まずそのヒントとなるのが、カウンター6席(現在は新型コロナウイルス感染防止対策のため5席)という店舗スタイルだ。「海鮮」を扱う店舗には日本食の料理人がいて当たり前だったが、ここに料理人は一人もいない。そして店頭では包丁いらずで、会計までのオペレーションは基本1人だという。人件費は抑えられているはずだが、海鮮丼の値段は安いわけではない。それは、なぜだろうか。

ふぃっしゃーまん亭 吉岡 康貴マネージャー

魚食文化の「美味しさ」と「未来への投資」

 「当店は、衰退している魚食文化とサステナブル・シーフードの魅力を発信するためにつくりました。サステナブル・シーフードというのは、環境保全や持続可能なことを世界基準で認証を得た養殖や天然の水産物(ASC/MSC)のことです。ここで提供しているものは、その認証がついたものを提供しているので値段は下げられないんです」と、商品へのこだわりを話す吉岡氏。

銀鮭の王様 銀王丼(宮城県女川 マルキン)

 また省人化ができるのも、高度な冷凍技術によって加工された魚を解凍してご飯に盛るだけの「職人要らず」なマニュアルと電子決済を導入するなどのDXで、人に頼らないオペレーションを推進しているからだという。吉岡氏は「看板メニューの4品は、ぜひ食べてほしい」と話す。女川産の銀鮭「銀王」は日本の銀鮭養殖で初めてASC(責任ある養殖により生産された水産物)を獲得し、気仙沼の昭福丸「本マグロ」に至っては世界初のMSC認証という快挙!そして、塩竈の一本釣り「藁焼きビンチョウマグロ・カツオ」も混獲することない漁法がMSC認証されている。

本マグロ二色丼 中トロ・赤身(宮城県気仙沼 昭福丸)

魚食文化を未来に繋ぐ取り組みはもちろん素晴らしいが、言うまでもなく品質も一級品!漁獲してすぐに冷凍加工を施された魚は、新鮮な状態で品質管理ができているため脂がのっていて、とろける旨味が堪らなく美味しい。

次世代へ繋ぐ! ASC/MSC認証取得サポート

 ふぃっしゃーまん亭を運営するフィッシャーマン・ジャパン・マーケティングでは、海から消費者までを一気通貫でつなぐ次世代の流通モデルを実践。「ASC/MSCの認証水産物を消費者の皆さんへ提供するためには、CoC認証も取得する必要があります。弊社では、株式会社センシン食品(名取市閖上)にこの取得サポートをして、提供している認証水産物の加工をお願いしています。それとどんなに素晴らしいものでも、手に取りづらい高級食材では意味がないので消費者にとって、身近な“丼”で提供することにしました」と、吉岡氏。

世界の海洋水産資源は海の環境悪化や過剰漁獲のために、昨今では安定して漁獲されている割合は少しずつ減ってきているという。そのため世界では、未来でも美味しい魚が食べ続けられるようにと、持続可能な漁業が注目されASC/MSC認証の普及が推奨されている。吉岡氏は「次世代へと続く未来の水産業を漁師だけではなく、漁協・行政・飲食店・消費者はもちろん、弊社のような鮮魚卸企業も力を合わせて“流通革命”を巻き起こして、魚食文化を守っていけるようにしたいです」と、次世代における水産業の可能性を話してくれた。私たちの美味しい食卓を守るのは、消費者である私たち自身が日頃の食生活を見直すことなのかもしれません。

世界への玄関口で「流通革命」始動!

 ふぃっしゃーまん亭は、仙台国際空港2Fの搭乗口隣にある土産エリアの中央にある。エスカレーターを昇ってレストランエリアに行く動線から少し離れたところにあるが、白い暖簾に導かれる。現在は新型コロナウイルスの影響で客足は思うようには伸びていないが、空港社員たちが朝ご飯やランチで利用することが多いという。「開店は朝7時なのでお茶漬け目当てに朝、来られる方もいらっしゃいます」と、吉岡氏。

2016年7月に仙台国際空港が民営化となり、東北と海外を結ぶゲートウェイの整備が進んでいる。この海外事業での輸出組合を立ち上げから携わってきた吉岡氏は「この場所からASEANを中心としたアジア諸国へ、東北の生鮮食品の輸出などによるインバウンド事業を展開していきたいです。またこれまでのフランチャイズは安価もので拡張してきたけれど、今後は品質重視だったり生産者直営の安心を手頃に楽しめる時代になってほしいと思います」と、海外事業へ期待を寄せる。

【プロフィール】
ふぃっしゃーまん亭
2021年4月12日、仙台国際空港にオープン。宮城の漁師&魚屋団体『フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング』が運営するサステナブル・シーフード店。ASC/MSC認証の品質を気軽に海鮮丼で楽しめる。

< ふぃっしゃーまん亭 >
https://fishermanjapan.com/project/ふぃっしゃーまん亭/

< ASCジャパン >
https://www.asc-aqua.org/ja/

< MSC >
https://www.msc.org/jp

< CoC >
https://www.msc.org/jp/forbusinessesjp/supply-chain/msc-cocJP

< 水産庁 世界の漁業・養殖業生産 >
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r01_h/trend/1/t1_3_1.html

【LocalBook編集部後記】
漁業「新3K」確立のために日々奮闘している、フィッシャーマン・ジャパン直営のイートイン店「ふぃっしゃーまん亭」。限りある食材をこれからも「当たり前」に食べられるよう、漁師や水産業の方とSDGsへ取り組むIT企業の柔軟さに驚きました。新型コロナウイルスで世界中が安心して生活を送れない今だからこそ、安全安心に美味しいものが食べ続けられる幸せを考えていきたいです。(ライター:太田和美)

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