【コーヒーを通して“東北時間”を届ける】東北6県の風土を表現したブランド「東北DRIPPERS」の魅力と商品開発をするTregion株式会社の想い

 東北6県それぞれの特徴を表現したコーヒーブランド「東北DRIPPERS」。仙台国際空港などで販売されており、ご存じの方も多いかもしれない。どのようなコーヒーなのか、東北DRIPPERSを運営する、Tregion株式会社代表取締役の吉田慶さんにお話を伺った。

「コーヒーを通して“東北時間”を届ける」がコンセプト

Tregion株式会社 代表取締役・吉田慶さん。自らが経営する仙台国際空港内のAirport Restaurant TREGION GALLEYにて

 Tregion株式会社は現在、「東北のファンづくり企業」として、店舗事業、イベント事業、PR事業、珈琲事業と4事業を行っている。メインとなるのは店舗事業で、2013年に飲食店1店舗を開店、2014年に法人化し、現在は東京都に1店、宮城県に2店、岩手県に2店、合わせて5店舗の飲食店を経営する。

提供するのは、東北産の食材を使った料理、スイーツ、そして東北各地のクラフト生ビール、ワイン、地酒などの飲み物。「食を通して東北の魅力を知っていただき、東北のファンを増やすことを目指しています。また、土日には交流イベントや、自治体と連携して地域フェアを行っています」と吉田さんは話す。

飲食店のメニューでもあり、事業の1つである珈琲事業がコーヒーブランド「東北DRIPPERS」の展開。「コーヒーを通じて“東北時間”を届ける」をコンセプトとしており、各県の風土やイメージに沿って東北6県それぞれのブレンドが作られている。

例えば全国トップのりんごの生産地である青森県は「もぎたて林檎のようなスッキリとしたさわやかな味わい」、秋田美人で名高い秋田県は「おだやかでやさしくも凛とした味わいは美人の風格が漂う」などそれぞれの特徴をとらえている。吉田さんが豆選びから焙煎をして東北各県ごとのブレンドを試作し、デザイナーとプロデューサーとスタッフで味をみながら、調整して作ったという。

各県を思い浮かべながら飲み比べると、東北を旅しているような気持ちになる (提供写真)

岩手県盛岡市の自社焙煎所で焙煎したコーヒーは、ドリップパックと缶売りという2種類の方法でオンラインストアや店舗で販売されている。「一番人気があるのは“東北DRIPPERSドリップパック詰め合わせ”で、6県のドリップパックがセットになっています。また、コーヒー缶は70グラムのミニ缶と150グラムのレギュラー缶があり、風味や香りが長く持つのが特徴です」と吉田さんは話す。東北DRIPPERSは、吉田さんの東北への想いから生まれたものだった。

「東北への恩返しをしたい」という想いが原点となったドネーション付きコーヒー

 東北DRIPPERSが販売を開始したのは2022年4月のことだった。2020年からのコロナウイルス感染拡大の影響で、飲食事業を主とするTregion株式会社も今までにないような打撃を受けた。「これからはお客様に来ていただくのを待つばかりではなく、会社から商品を届けるサービスもやっていこう」と思いついたのが、コーヒーだった。

「弊社の飲食店でカフェ業務を行っていたことと、私自身コーヒーが大好きで焙煎にも興味がありました。そこで焙煎機を購入してブレンドを作り、試しに店で出したらなかなか好評で。そこで東北6県それぞれのイメージに合わせたブレンドを作り、お土産やギフト商品にしたいと考えました」。

焙煎機に向かう吉田さん(提供写真)

だが、それだけではない。東北DRIPPERSには吉田さんの東北への想いがたっぷり込められている。「もともとは東京出身なのですが、東日本大震災後に岩手県遠野市のNPOでボランティアや職員として復興支援に携わった経験があります。その時に、多くの人たちに助けてもらうなど東北に救われました。その恩返しをしたい、支援だけではなくビジネスとして還元したいと思ったことがTregion株式会社設立の原点となっています。もちろん東北DRIPPERSもその一つで、商品を購入した人がコーヒーを飲みながら、東北を想う時間をつくってもらえれば嬉しい、という想いから作りました」。

「コーヒーを飲む時間はホッと一息つける時間、そんな時に東北に想いを馳せてもらえたら」という気持ちから作られた(提供写真)

さらに、吉田さんの東北を想う気持ちが表れているのが、ドネーション(寄付)付きということだ。東北DRIPPERSの売り上げの一部は、東北を元気にする活動を行う団体に寄付している。テーマを設定し期間は1年間。東北各県から1団体ずつを選び、それぞれに2か月間ずつ寄付をする。2022年5月からの1年間は、若者支援がテーマ。「コロナ禍で学校行事がなくなるなど割りを食ったのが若者世代。彼らを支援する団体を応援したいと考え、テーマを“若者”にしました。若者支援の活動をする団体をピックアップし、活動への想いなどお話を伺い、共に何かに取り組めそうな団体へ支援させてもらいました」。

東北への思いについて目を輝かせながら話す吉田さん

これらの活動を通じて繋がった団体とは今も交流が続いている。そのうちのひとつが宮城県気仙沼市の「NPO法人底上げ」。「気仙沼プロジェクト」など高校生が“自分のやりたいこと”と“地元のためにできること”を考え、行動を起こすサポートに取り組む団体だ。2か月間の支援期間が終わった後も、代表者が仙台市にあるTregionの店舗「東北カフェ&バル トレジオン」で一日店長を務めるなど、つながりが深い。「寄付を通じてお互いの事業が発展するような関係性を築ければいいなと思っています。今後も大切にしていきたい」と吉田さんは振り返る。

東北の「地域商社」的役割を

 東北DRIPPERSの販売開始から間もなく1年。仙台国際空港の売店、渋谷・銀座ロフトやハンズ仙台店、カネイリスタンダードストアなど取扱店が増えた。週末に行う仙台駅や盛岡駅での販売で購入した人が、「お店でも飲んでみたい」とTregionの店舗に来店するなど着実にファンが増えているように見える。だが、吉田さんはまだまだこれからという。「今後は、飲食店や宿泊施設などにも流通を増やしていきたいです。また、現在販売しているエリアの多くが宮城県と岩手県なので、東北各県へのポップアップストアの設置や、自治体とタイアップし各市町村の名前を付けたブレンドの製造・販売などをしていきたい」と力を込めて話す。

東北DRIPPERSのコーナーが設けられている仙台国際空港2階「総合売店 萩」

そして東北DRIPPERSを含むTregion株式会社の事業全体に対しては、「東北は土地の豊かさ、美味しい食材の多さ、人の温かさなど良いところがたくさん。私は東京出身ですが、よそから来た人の立場から、東北の良さを伝える“地域商社的な役割”を果たしていきたいです」と語る。

たくさんの想いを感じることができるコーヒーブランド東北DRIPPERS。東北の良さや温かさが詰まったコーヒーを飲みながら、ゆったりと東北に想いを巡らすのも良いだろう。
また、6種類の様々な味わいを楽しむことができるので、ギフトとしてもおすすめである。東北にゆかりがある人はもちろん、今まで東北に縁がなかった人にも喜んでもらえることうけあいだ。

東北DRIPPERSギフトセット。ミニ缶とレギュラー缶のセットもある(提供写真)

<プロフィール>
東北DRIPPERS
「東北のファンづくり企業」として東京都、宮城県、岩手県で5店舗の飲食店を展開するTregion株式会社による自家焙煎コーヒーブランド。「コーヒーを通して東北時間を届ける」をコンセプトに、東北6県それぞれのブレンドを揃える。また、ドネーション付きコーヒーという面もあり、売り上げの一部は東北を元気にする活動をする団体に寄付されている。オンラインストアや、Tregion株式会社の飲食店、渋谷・銀座ロフト、ハンズ仙台店などで購入できる他、JR仙台駅やJR盛岡駅などで不定期に出張販売も行う。

Tregion株式会社(菜園焙煎所)
住所:岩手県盛岡市菜園1丁目8-3
電話:019-601-2305
HP: tohoku-drippers.com
Instagram: https://www.instagram.com/tohokudrippers/

【編集部後記】
私が東北DRIPPERSを知ったのは、2022年5月のこと。週末に仙台駅で出張販売しているのを見かけたことがきっかけでした。各県ごとの鮮やかなパッケージに引き寄せられ、東北6県すべてが入ったドリップパック詰め合わせを購入。まだコロナ禍で旅行が難しかったのもあり、家で飲み比べながら、現地に行った気分に浸っていました。と同時に、どのような方々が企画し作られたのか、商品に込められた想いなどを伺いたいと思っていました。今回、その願いが叶い、Tregion株式会社の吉田様に取材させていただくことができました。吉田様の東北に対する想いに触れ、取材者として、一人の東北住民としてとても嬉しく、胸が熱くなりました。今後も応援しております。(ライター・鈴木千絵)

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