原子力の現場にAIを!東大発スタートアップが福島県楢葉町にオフィス開設
東京大学松尾研究室発のAIスタートアップ、EQUES(東京都文京区)は9月8日、福島県楢葉町にオフィスを開設した。原子力やエネルギー分野でAIを実際に役立てる「社会実装」の拠点と位置づける。

楢葉町がある福島県浜通り地域は、東日本大震災と原子力災害からの復興に向き合いながら、廃炉やエネルギー、ロボット、製造業などの産業集積を目指している。一方で原子力産業には、設備の高度な保守や安全性の確保、熟練技術者の不足と技術の継承、厳しい規制と品質管理といった課題も多い。同社は、AIでこれらを高度化できる可能性に着目した。
拠点の名称は「EQUES 楢葉町オフィス」。原子力・エネルギー分野のAIの研究開発をはじめ、原子力設備の保全や点検の高度化、廃炉現場でのAI技術の実証、原子力関連企業や研究機関との共同研究に取り組む。AIやデジタル化を担う人材の育成、地域企業と共に新しい事業を生み出す取り組みも進める。
特に力を入れるのは3つの分野だ。1つ目は、ロボットとAIを組み合わせて点検や調査、保守作業を効率化する「フィジカルAI」。2つ目は、設備やセンサーのデータ、運転記録をAIで分析し、異常の兆しを早めに見つける「予兆検知」。3つ目は、AIがなぜその判断をしたのかを目に見える形にし、監査や報告に使えるようにする「説明可能AI」となる。
フィジカルAIでは、クフウシヤ、日本原子力研究開発機構(JAEA)、東京大学工学系研究科などと共同で、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた技術を開発している。放射線量の高い場所で、離れたところから作業を行うためのロボット技術だ。今後は楢葉町や地域企業、大学などとの連携も広げていく。
株式会社EQUESは2022年に設立された。「福島で生まれたAI技術を、全国、そして世界の重要インフラへ」との方針を掲げている。将来は廃炉支援にとどまらず、原子力発電所などエネルギーインフラ全体の安全性と生産性の向上を目指す考えだ。製造業や化学、医薬など、規制の厳しいほかの産業への応用も視野に入れる。

