【宮城】GAMA ROCK FES 2020がYouTubeライブ配信で開催された。キャンドルの灯りに込める、塩竈の再起と希望の灯火。地域に寄り添う野外フェス10年目への思い。

 2011年4月17日、東日本大震災直後に元ロイヤルホームセンター(宮城県塩竈市沿岸)駐車場で、炊き出しとともに行なったライブを皮切りにはじまったGAMA ROCK FES。被災した方々の心に、キャンドルの灯りと生音で希望の明かりをともし、2012年9月22日に初開催、今年9月21日にはライブ配信で開催され、9回目を迎えた。今回、主催者の一人である平間 至氏(写真家)に塩竈への思いとともにお話を伺った。

GAMA ROCK FES 2020のライブ配信

GAMA ROCK FESのはじまり

 GAMA ROCK FESは、ダンサー ATSUSHI氏(POWER of LIFE)と写真家 平間至氏(塩竈市出身)が東日本大震災後、塩竈市を拠点に支援活動を続ける中で、さらに継続的な活動を目指して開催することを決めた。ATSUSHI氏は以前より、POWER of LIFE(生命の素晴らしさや尊さを伝えるプロジェクト)で表現活動やアニマルシェルターへの支援活動を通して「生死」と対峙してきた経緯もあり「とにかく行かなきゃ。困っている人がいたら手を差し伸べる。」という使命感から、震災から2、3日後に平間氏と連絡を取り合い、3月22日には宮城県へ。

ATSUSHI氏(左)とMONGOL800キヨサク氏(右)

 炊き出しや支援物資を運びながら被災地の方々が何を必要としているのかを聞いて回り支援。地元との交流を深めながら4月17日にはGAMA ROCK FESの前身となるフリーライブが開催された。「この時、大げさな告知はせず1,000人弱集まったんです。そこで再会した人たちや、自殺するのを止めようと思った人がいたと聞いて、開催してよかったと思いました」と、平間氏。この瞬間、参加した人たちに希望の灯りが灯り、GAMA ROCK FESの土台となった。

 そして翌年2012年にGAMA ROCK FESを開催。塩竈市みなと公園を会場にMUSIC/ART/FOODで多くの人に塩竈の魅力を伝え、塩竈の街が元気になることを願った野外フェスの幕が上がった。二人の思いに賛同したアーティストをはじめ、塩竈を想う多くの方々の協力を得て、毎年老若男女を問わず、反響を呼んでいる。主催者が2人であることについて平間氏は、「それぞれやりたいこととできることがあって。私は塩竈が地元ということもあり、アーティストやフェスを地元の皆さんや役所の担当者の方に繋ぐ役割として動くことが多いですね。ATSUSHIも自分のパフォーマンスはもちろんだけど、POWER of LIFEの活動の一環で、会場内で被災した犬たちの里親探しを紹介したりしています」と、振り返る。

GAMA ROCK FESと塩竈の魅力

 震災後ほどなくして開催されたGAMA ROCK FESだが、震災だけがきっかけではない。2006年頃から塩竈市で、アートや音楽での町おこしの話し合いをしたことが基盤となっている。そしてその基盤を築きあげてきた仲間は、今のGAMA ROCK FESを支えている。

塩竈やさまざまな繋がりによる食・アート・音楽の力が集結したGAMA ROCK FES。関わる人それぞれが塩竈への愛着(美味しさと優しさ)を兼ね備えており、フェス会場はいつも特有の「ゆるさ」がある。「役所の担当者とか飲食の出店者は、地元の知り合いだったりするんです。だから自然と団結力みたいのは生まれていると思います」と、平間氏。野外フェスというと、広大な土地で立ちながら盛り上がるイメージが強いが、GAMA ROCKは一味違う。はじめて塩竈に来た人でもすぐ会場の空気に馴染むことができて、芝生に座り込んだり、アートワークショップに参加したり、移動図書館で本を読んだりと、好きな時間を自由に過ごせるホーム感。そしてなんといっても、出演アーティストたちと観客との距離が非常に近い。

この「ゆるさ」は、ともに前を向いて地元・塩竈の再興を願い、寄り添い続けた方々がこのフェスに関わり、その思いに賛同したアーティストたちが創り出しているのだろう。

震災復興とコロナからの再興

 震災からの復興を塩竈市とともに歩んできたGAMA ROCK FES。9回目となる今年は、新型コロナウイルスの感染回避のために、塩竈市みなと公園での開催を断念し、YouTube配信による開催となった。はじめに、収録されたGAMA ROCK TALK 居酒屋「ゆるゆる亭」が配信された。塩竈出身である平間氏と大友 康平氏、山寺 宏一氏が会場で振舞われている地酒や地場産品をつまみに、それぞれの塩竈愛が語られた。なぜ居酒屋というシチュエーションを思いついたのかを伺うと、「居酒屋をコンセプトにしたのは、毎回バックヤードで繰り広げられている大友さんとメンバーの楽しそうな様子を再現しました」と、平間氏は大友氏を思い浮かべながら話してくれた。

宮城県の地酒(阿部勘、一ノ蔵、浦霞)や銘菓(梅花堂の藻なかさぶれ、榮太郎のなまどら焼)はもちろん、会場近隣に工場と直売所を構えることからお世話になっているという、蜂屋食品「はちやの餃子」も紹介されたりと、GAMA ROCK FESならではのご近所付き合いも垣間見ることができた。「私たちのフェスは、一回も苦情が来たことないんです!すごいことですよね。蜂屋さんも会場で餃子を提供してくれたり、我々のことを受け入れてくれて、とてもよくしてくれます」と、平間氏。TALK内で紹介された地酒や地場産品の一部は、通販サイト「宮城・山形 産直マルシェ」で購入できる。

▲当日の様子は動画にて(クリックすると動画が始まります)

GAMA ROCK TALKが終わると、ATSUSHI氏と風人雷人(ATSUSHI氏×中村 達也氏)、柴田三兄妹(宮城県出身・津軽三味線奏者)によるライブ配信がはじまった。この会場も毎年GAMA ROCK FESメインステージの装飾を担当している有限会社涼仙の手によるものだ。観客がいない中での開催について「いつもはお客さんや会場の様子を撮影していたので、今回ははじめてGAMA ROCK FESで演者を撮影しました。演者と距離も近かったので、作品の一部になっている感覚になり面白かったです」と、平間氏。

平間氏(左)とATSUSHI氏(右)

「今回、コロナの影響で現地開催はできませんでしたが、塩竈のことをより多くの皆さんに伝えられたという点ではよかったし、GAMA ROCKらしさを伝えるには最適な方法だったように思います」と、配信での手応えについて話す平間氏。「おいしおがま(美味しい塩竈)、やさしおがま(優しい塩竈)」を合言葉に塩竈愛が止まらないGAMA ROCK FES。10回目を迎える来年は、コロナ情勢も考慮しなければならないが、みなと公園での開催を期待したい。

【プロフィール】

GAMA ROCK FES
ダンサー ATSUSHI(POWER of LIFE)と写真家 平間至氏(塩竈市出身)が中心となり、2011年4月13日に0回目を元ロイヤルホームセンター(塩竈市沿岸)駐車場にて開催。以降、塩竈市みなと公園を会場にし、2021年に10回目を迎える。

http://gamarock.net

< POWER of LIFE >
https://poweroflife.jp

<宮城・山形 産直マルシェ>
https://www.miyagi-yamagata-sanchoku.com

<有限会社涼仙>
https://ryo-sen.com

【LocalBook編集部後記】
 この取材は、ビルドフルーガス(塩竈のギャラリー)の高田彩さんからお繋ぎいただき、平間さんにお話を伺うことができました。取材時、ひらま写真館(平間さんの祖父の代から続く塩竈の写真館)にて平間さんの30周年写真展が開催されていて、写真も拝見させていただきました。GAMA ROCK FESと同じく、平間さんの写真には被写体の「あるがまま」の自然な姿が写し出されていて、自分の家族や知り合いをみているかのような温かい写真が迎えてくれました。地元を大切にする平間さんの心に触れられたような、優しさに包まれる取材となりました。
(ライター:太田和美)

ピックアップ記事

関連記事一覧