絶景プロデューサー・詩歩さんによる「オンライン絶景ツアー」をレポート!秋田・男鹿半島でアジサイやなまはげ太鼓ライブを体験

 新型コロナウイルス感染拡大により、現在はかつてのような”自由な旅行”を楽しめない状況となっている。GoToトラベルキャンペーンが実施される一方、このタイミングで旅行をすることに違和感を覚える人も多い。そして、観光地も声高に誘客のできない状態が続いている。そんなコロナ禍の中、一風変わったツアーが開催された。絶景プロデューサーとして国内外の”絶景”を発信する、詩歩さんが主催した「オンライン絶景ツアー」である。今回は、7月2日に秋田県・男鹿半島とオンラインで繋いで行われたツアーの様子を紹介したい。

なまはげからアジサイ、夕日、温泉まで。 男鹿半島の魅力を味わい尽くすツアー

 ツアーは6月24日に販売開始され、翌日には先着20名分が完売。応募者の自宅には、事前にツアーグッズが届いた。中身は、あじさいボールペン・雲昌寺あじさい御守・写経体験用シート・なまはげクリップ・男鹿半島パンフレット・詩歩さん手作りのしおり。ツアーで訪れるスポットにゆかりのあるグッズが届き、この時点で満足度が高い。

ツアーグッズ

ツアーグッズ。ボールペンの中には、本物のあじさいの花びらが入っている

 配信はオンライン会議システム「zoom」を用いて行われた。17時半の定刻通りに参加者がzoom上に集合。冒頭に詩歩さんの挨拶や諸注意の説明があり、いよいよツアーがスタート。詩歩さんによると、このツアーは「自由におでかけできない今だからこそできることはないか?と考えて企画した」とのこと 。また、ツアーガイドを担当したのはプロダクション人力舎所属・こじま観光さん。芸人になる前は旅行代理店のJTBで勤務しており、世界各国のツアーを企画していたそう。 ツアーの参加者は日本全国から集まり、居住地に関係なく参加できるオンラインツアーの強みを感じるはじまりとなった。

絶景プロデューサー・詩歩さん

こじま観光さん

プロダクション人力舎所属・こじま観光さん。現在は「旅行芸人」として活躍

 ツアーの舞台は、秋田県・男鹿半島。県北西部の日本海に突き出た半島で、三方を海に囲まれた自然豊かな地域である。また、国の重要無形民俗文化財・ユネスコ無形文化遺産に登録されている「ナマハゲ」で有名な地域でもある。

なまはげ立像

男鹿半島の入り口にある「なまはげ立像」の映像(事前収録) からオンラインツアーがスタート

 1つ目の目的地は、「男鹿温泉交流会館 五風」。冬季を除き毎日のように「なまはげ太鼓ライブ」が開催されており、”男鹿の定番イベント”として人気のスポット。しかしコロナ禍により、4月末~6月はほぼ休演。オンライン絶景ツアーが行われた7月2日も本来であれば休演だったが、無観客かつ規模を縮小した上で特別ライブが行われた。(公演スケジュールは要HP確認)

なまはげ太鼓ライブ

「なまはげ太鼓ライブ」の様子

  参加者は、約10分間のステージを画面越しで楽しんだ。舞台上では2名のなまはげが暴れまわり、太鼓の音・光・動きすべてが大迫力。普段はなまはげ4名でパフォーマンスをしているという。現在は、通常時の半分ほどに座席を減らしてライブを行っている。なまはげと言うと“大みそかに民家を訪れて子どもが泣き叫んでいる様子”をイメージする人が多いだろう。鬼のように見えるが、実際は神の遣い。しっかりおもてなしをすれば、翌年一家に幸せが訪れるという(諸説あり)。 ライブ終了後は、出演者にインタビューを実施。今回ライブに出演した2人は地元出身で、学生時代に「なまはげ太鼓」を叩く先輩の姿に憧れて取り組みを始めたそう。「年を重ねるにつれ、伝統を守ることの大切さ・必要性が分かった。自分の子どもにも伝えたい」と想いを話してくれた。

 「なまはげ太鼓ライブ」の次は、本ツアーのメインである「雲昌寺」へ。副住職の古仲さんが1から植えたアジサイが有名で、“アジサイ寺”と呼ばれているほど。詩歩さんは2017年に現地を訪れており、古仲副住職とも親交がある。毎年たくさんの観光客が訪れるが、今年は拝観を“秋田県民のみ”に限定。例年の6割ほどの集客に落ち着いているという。

 

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ババヘラアイス

雲昌寺前には「ババヘラアイス」の販売所が。色合いはアジサイをイメージしており、副住職が監修に携わった

 雲昌寺には1500株以上のアジサイがあり、なんと副住職が1人で育成したのだという。境内に1株だけアジサイが咲いており、その美しさに心を奪われたことがきっかけで育て始めた。「アジサイを増やしたら、檀家さんや近所の方に喜んでもらえるのでは」……そんな思いで、15年かけて株分けし、現在の花畑のような景色を作り出したそう。

山門

山門をくぐるタイミングで、参加者一同エアーお辞儀

 山門の正面に本堂があり、副住職が代表して参拝。サプライズで参加者全員分の50円玉が用意されており、1人ずつ名前を呼びあげながらお賽銭を投げてくれた。全員で手を合わせ、合掌。

手水鉢

境内にある手水鉢。中のアジサイは毎日取り替え、美しい状態がキープされている

展望台から見た景色

展望台から見た景色。奥に日本海が見える

アジサイの見どころ

展望台から振り向いた景色が、雲昌寺1番の見どころ

 ツアー当日は小雨が降っており、アジサイが少し下を向いていた。詩歩さんいわく、「絶景は天候により見える景色が変わる。これもまた魅力」とのこと。雲昌寺のアジサイは密集しており、身長より高く咲いているものもある。副住職が「(アジサイの間を歩くと)両脇から話しかけられているような感じがする」と話していたのが印象的だった。雲昌寺では、アジサイの色を”青”にこだわって育成している。青(瑠璃紺)は、仏教でもなじみのある色で、空・海・アジサイが織りなす景色は「雲昌寺ブルー」とも呼ばれている。その美しさから、ウェディングフォトの撮影場所として使われることもあるそう。

微笑み地蔵

微笑み地蔵。新型コロナウイルスの終息を願って設置された

 雲昌寺には、竹林やお地蔵さん、猪目石などアジサイ以外の見どころも多数。実際に訪れたら、ついつい長居してしまいそうだ。 アジサイ見学の次は、「オンライン瞑想体験」。副住職から座禅の方法を教えていただき、呼吸を整えて瞑想を体験。

座禅の様子

座禅や瞑想について説明する古仲副住職

 鐘が3回鳴ったのを合図に、瞑想をスタート。普段は1時間かけて行うが、今回は3分間の短縮版で実施した。瞑想終了後、参加者から「“無心”になることが難しい」と質問が。古仲副住職からは「無の心は無理。呼吸に集中しよう」とアドバイスがあった。

 雲昌寺での体験を終え、次は夕日の名所へ。男鹿半島南部の鵜ノ崎海岸にある「ゴジラ岩」の動画(事前収録) を視聴。実はツアーが30分程押しており、本来であれば夕日に間に合わない時間。だが、オンラインツアーだからこそ時間がズレても、美しい夕日を堪能することができた。

ゴジラ岩

ゴジラ岩

 夕日が沈む角度は季節により移動し、アジサイの見頃にちょうど岩と夕日が重なるのだそう。その様子はまるで、ゴジラが火を噴いているような迫力。天気が悪ければこの景色を見ることはできないので、間違いなく夕日を拝めるのもオンラインツアーならではの利点。

鵜ノ崎海岸

鵜ノ崎海岸。遠くにかすかに見えるのが、秋田と山形の県境にある鳥海山

 海面に空が反射し、鏡のように。これは、風が無い日だけ見ることができる景色。マジックアワーのグラデーションが、とても美しかった。

 アジサイ、ゴジラ岩と絶景を堪能したところで、最後のスポット「別邸つばき」へ。男鹿温泉は、平安時代に坂上田村麻呂により発見されたと言われる温泉地。泉質は塩分が高く湯冷めしにくいため、ポカポカが長く持続するのだそう。

露天風呂にエアー入浴。耳を澄ますと、温泉のお湯の音や小鳥の鳴き声が

露天風呂

 塩分が高い温泉は風呂のまわりに塩がついてしまうため、管理が難しいのだそう。温泉ソムリエの資格を持つ詩歩さんから説明を受けつつ、エアー入浴を楽しんだ。

 温泉を堪能したあとは、“お土産”の説明も。男鹿の特産品などを購入できる「男鹿なび通販」が紹介された。

オンラインショップの紹介

詩歩さんが取り寄せたのは“ぎばさ”。麺つゆで味付けするのが古仲副住職のおすすめ

 最後に、詩歩さんから「オンラインという特殊なかたちではあったが、男鹿の人や景色を感じてもらえたのでは。絶景は、本当は360度と五感で楽しむもの。いつかぜひ現地に行って、グルメを楽しんだり、太鼓の迫力を感じたり、古仲さんとお話をしてほしい」とコメントがあり、ツアーが終了。

記念撮影

全員で記念撮影

 

オンラインツアーは、「未来の旅」を喚起するか

 冒頭で触れた通り、現在はコロナ禍により自由な旅行ができない状態である。日々感染者が増える中、県をまたぐ移動を自粛する人も多い。GoToトラベルキャンペーンは東京が除外されるなど、軽視できない状況が続いている。旅行が禁止されているわけではないとはいえ、気軽に移動できる日がとても待ち遠しい。

 そんな“旅不足”な日常において、この「オンライン絶景ツアー」は大きな可能性を感じる体験となった。もちろん、実際の旅行の代替にはならない。だが、「なまはげライブを生で見たい」「満開のアジサイをこの目で見たい」「副住職とお話してみたい」……など、『男鹿半島にいつか行きたい』という欲が高まったのは事実。オンラインであったとしても、現地の人と触れ合うことや景色を見ることはとても刺激的だった。

 旅をすること、旅行者を受け入れること。双方が高い危機意識を持つ必要がある今、選択肢のひとつとして「オンラインツアー」を企画してみてはどうだろうか。お互いの顔を見ながら進めるツアーは、想像以上に「いつか現地に行きたい」という想いを掻き立てる。オンラインツアーは、「未来の旅先」を見つけるきっかけになるはずだ。

〈オンライン絶景ツアー・行程〉
17:30 集合・ツアー開始
   「なまはげ太鼓ライブ」視聴
    雲昌寺 アジサイ見学
    雲昌寺 オンライン座禅体験
    ゴジラ岩の夕日
   「別邸つばき」でオンライン温泉
    記念撮影
19:15 ツアー終了 

〈オンライン絶景ツアー・主催者〉
「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」プロデューサー・詩歩さん
詩歩さん写真

1990年生まれ。静岡県出身。世界中の絶景を紹介するFacebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を運営し、70万以上のいいね!を獲得し話題に。 書籍「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」シリーズを出版し累計63万部を突破。アジア等海外でも出版される。昨今の”絶景”ブームを牽引し、2014年は流行語大賞にノミネートされた。現在はフリーランスで活動し、旅行商品のプロデュースや企業とのタイアップ、自治体等の地域振興のアドバイザーなどを行っている。浜松市観光大使。

●Facebookページ「死ぬまでに行きたい!世界の絶景
●Instagram @shih0107
●公式YouTubeチャンネル 絶景チャンネル
●ブログ「Shiho and…

☆詩歩さんによる「オンライン絶景ツアー」の振り返りはコチラ(有料記事)

【LocalBook編集部後記】
 「オンライン絶景ツアー」に参加し、来年のアジサイの頃に男鹿半島に行きたい、という思いが高まりました。最近はアンテナショップで購入した”ぎばさ”を食べて、自宅で秋田を感じています。詩歩さんによる、絶景プロデューサーならではの説明もとても楽しかったです。こじま観光さんの軽快なガイドもおもしろく、2時間半ほどの行程は飽きる暇が無くあっという間でした。また機会があればオンラインツアーに参加し、「未来の旅先」を見つけたいと思います。(堀越 愛)

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