キーワードは福耕(ふっこう)!美味しい、楽しい、福島を知ってほしい! 福島の未来を形づくる「ふくしまHOPEプロジェクト」とは!?

 福島を元気にし、福島から日本を変えていく様々な活動を行っている「ふくしまHOPEプロジェクト」。福を耕すと書いて福耕(ふっこう)をキーワードに、ふくしまからワクワク溢れる活動と人と物を発信している。この活動は2020年から始まり現在2年目を迎えている。今回発起人のひとり、七宮拓氏にプロジェクトの歩みや活動についてお話をうかがった。

福島のイメージをもっとポジティブに

 2011年の東日本大震災・原発事故から、着実に復興を続ける福島県。農業・漁業関係者を中心に風評被害を払拭する地道な努力が実を結び、県産品の輸入規制を解除する国も増えてきている。それでもなお、完全には消えないネガティブなイメージ。福島といえば震災・原発事故、というイメージは強烈すぎて10年経った今もなかなか消えていない。実際にあったことは変えられないので、それを否定するよりも、楽しいもの、おいしいものなど、福島の魅力を積極的にアピールし、ポジティブなイメージに変えていきたい。そうした思いから、「ふくしまHOPEプロジェクト」は始まった。福島で生まれ育ち、今も福島で働く七宮氏と、株式会社クノウ(福島県郡山市)でUIターン事業などを手掛ける久能雄三氏ら3名が中心となり、途中オンラインマルシェなどを運営する合同会社スマートルーチェ(東京都)の大重 雄進氏が加わって、2019年にスタート。第1回の取り組みとして2021年3月に最初のシンポジウムが行われた。

熱気に溢れた初めてのシンポジウム

 「当時はまだまだ運営も手探りで、バタバタしていました。ただ、シンポジウムの中身はとても熱いものになったんです」と七宮氏は振り返る。シンポジウムは2部構成で、1部は海外出身者、福島ゆかりの参加者、放射能や防災の研究者など、約80名の多彩な参加者が、震災当時の福島と現在の福島について思いを語り、2部では学生を中心に、福島にあまり詳しくないという人が1部での話を受けて感じたことなどを話し合った。現地の人でなければわからないこと、海外からの見方、専門家の見解など様々な話を聞くことができた。例えば、浪江町の帰還困難区域で除染も進んでいない、いわゆる「白地地区」の出身で、農業を営む女性。福島市に避難して2年足らずで農園を立ち上げ、かぼちゃまんじゅうなどの6次産業化も手掛ける。今年から帰還の始まった地区でえごまの栽培も始めた。「前を向かなきゃと思って頑張ってきた」と笑顔で話す。大熊町出身で、やはり自宅には帰還できていないという男性も、浜通り出身者の団体を作ったり、浜通りの名産品のショップを開いたりしている。震災から10年が過ぎても自宅に帰れない人もいるというのも現実だが、前向きに生きる人々がたくさんいる事は確かだ。

海外で知られていない福島のいま

 一方で、台湾出身の参加者によると、親日的とされる台湾でさえ、福島産の農産物に対する認識は、原発事故当時のまま長い間変わっていなかったという。福島県産品を指して、ここに書くのをためらわれるような名称が使われていたという衝撃的な話もあった。「やはりまだまだ情報発信が足りない、もっと発信していかなければという思いを強くしました」とショックは受けながらも今後の指針になったと七宮氏は話す。一般的にネガティブな情報に比べて、ポジティブな情報は広がりにくい。不安な情報には敏感に反応しても、安全性が回復してきたというような情報は、自ら取りに行く人は少ない。海外であればなおさらだ。だからこそ、ポジティブな情報を発信し続ける、このプロジェクトの意義があるといえるだろう。

ふくしまHOPEプロジェクトではシンプルなことだが、福島っておもしろそうだな、行ってみたいなと思わせるものをどんどん発信していきたいという。わかりやすく人を惹きつけるのは地元の美味しい食べ物も一つだろう。福島でないと食べられないような食材もありますと七宮氏は紹介する。「例えば、レジェンドほうれん草ってご存じですか。生で食べるのが一番おいしいといわれていて、それはえぐみがほとんどなく、すごく甘いから。糖度がメロンより高くて20%もあるんですよ」。ほかにも、天ぷらにするとつるつるな食感のまま揚がるジャンボなめこ、皮付きのまま焼いてパリパリとほくほくの食感が楽しめる在来種の里芋「長兵衛」など、次々に紹介してくれた。

福島を軸に出会う、つながる。プロジェクトの4つの基本活動

 ふくしまHOPEプロジェクトの基本的な活動は、シンポジウム、ミニシンポジウム、オンラインマルシェ、ミーティングの4つがある。シンポジウムは年に1回、東日本大震災、いわゆる3.11をテーマに開かれる。今年2022年3月5日に開催されたシンポジウムでは、福島で活動する医療システム会社やAI関連企業の経営者、日本語指導者、カウンセラーがゲストスピーカーとして参加。引き続きオンラインマルシェが開催された。ミニシンポジウムは2ヶ月に1度開かれ、子育て、地域おこし、農業など様々なテーマについて専門家の話を聴く。金曜の夜19時から1時間と、参加しやすい時間設定になっている。

オンラインマルシェは3ヶ月に一度開催。Zoomのブレイクアウトルームを出展ブースに見立て、参加者は自由にブース間を行き来でき、出展者は商品・サービスの魅力を参加者にアピールできる。オンラインながら、よりリアルなマルシェに近い雰囲気を楽しめるのが魅力だ。出店条件は福島に関連がある、または福島に関心がある法人・個人。毎回15店ほどの出店があり、野菜、通販専門のパン、カフェ、アロマオイルなどバラエティに富んだ商品が販売されている。季節によっては、レジェンドほうれん草を購入できることもあるようだ。参加者は特に条件はなく、無料で参加でき、県内外から毎回7、80人ほどの参加があるという。

地元企業や福島を盛り上げたい事業者が出店を行う

ミーティングはオンラインで毎週木曜日20時から開かれ、七宮氏ら発足メンバーの紹介を受けた参加者が、各々のビジネスや福島の観光地・特産品などについて、少人数で自由に話し合うというもの。それぞれの活動はテーマも規模も異なるが、共通しているのは福島を軸に様々な人が出会いつながることで、新しいパワーを生み出そうということだ。ミーティングに参加した人がマルシェにも参加したり、マルシェの出店者同士で新しいビジネスの話が出るなど、新しい展開もよく起きているという。

今後はリアルイベントも

 今後やっていきたいことは、シンポジウムでも必要性を痛感した、海外向けの発信の充実だ。シンポジウムやミニマルシェのレポートを翻訳して、海外の人に見てもらうことなどを考えているという。また、コロナ禍との兼ね合いもあるが、オンラインと並行してやはりリアルイベントも開きたいと七宮氏は話し、「3000人くらいの規模のリアルイベントを開きたいですね」と意欲を語った。また、福島を盛り上げたい、自分のビジネスも拡大させたい、そんな気持ちの強い人とつながっていきたいという。「今は任意団体だが、運営体制もより組織化したい、ミニシンポジウムとオンラインマルシェはSNSなどで告知はしているが、プロモーションにももっと力を入れたい」と七宮氏の熱意が伝わってきた。

ビジネスとしてはまだ構築中の部分も多いというが、「福島についてのポジティブな情報を発信する」「福島に興味を持つ人を増やす」という活動は、思っていた以上に復興の力となる。このプロジェクトをきっかけに福島を軸につながる人々が増え、様々なビジネスが広がっていくことを期待したい。(ライター:ゆり)

★今後の開催予定について★

●ミニシンポジウム PM19時~
・2022年5月27日(金) ふくしまと世界をつなぐオンラインマルシェ
・2022年7月22日(金) 子育てワークショップ(予定)
・2022年9月30日(金) 地域おこし協力隊、ワーケーション施設(予定)
・2022年11月25日(金) 防災、災害と保険 (予定)
・2023年1月27日(金) ふくしまの農家さんと対談(予定)

●オンラインマルシェ
・2022年9月18日(日) AM9:00~12:00
・2022年12月18日(日) AM9:00~12:00

★ふくしまHOPEプロジェクトのイベント情報を受け取りたい方はこちら★
URL:https://fukushimahope.uishare.co/

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