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【TOHOKUイノベーター】「プログラミングで何をしたいかを考えられるようにしたい」プログラミング教材「JoinToy」を開発している株式会社あ×4代表 砂金よしひろさん

 2020年に必修化されるプログラミング教育を控え、にわかに活気づいているのが「エドテック市場」だ。NRIの調査によると、エドテックの市場規模は、2023年には3000億円を超えると予想され、今後も拡大が見込まれている。仙台にもこのエドテックの製品開発に取り組む人がいる。株式会社あ×4(アーバイフォー)代表の砂金よしひろさんだ。今回は砂金さんに製品開発に込められた思いを聞いた。

「プログラミングで何をしたいかを考えられるようにしたい」 プログラミング教材「JoinToy」を開発している株式会社あ×4代表 砂金よしひろさん 本人画像

株式会社あ×4代表 砂金よしひろさん

 

「子どもたちにプログラミングを教えたい」 震災を機にプログラミング教育の道へ

 砂金さんが開発しているのは、プログラミング教材「JoinToy」。昨年12月仙台で行われた「仙台アライアンスピッチイベント」では、メンター陣からそのアイデアが好評を得た。

 JoinToyは段ボールとQRコードを組み合わせたツール。QRコードが書かれた段ボールでプログラミング用のブロックを作成し、それらを並べてカメラで読み込むことでプログラミングを行う。廃材で作ったロボットに専用パーツを組み込むと、ブロックの形や色に応じてロボットが動き出す仕組みだ。

「ガンプラを動かせるようにしたいというのが元々の発想なんです。(ロボットを)動かすために必要だから覚えたことが、プログラミングの考え方だったというところに持ってきたい。それが今の試作しているもののベースですね」

 砂金さんはもともと地元の仙台市でエンジニアをしていたが、震災を機に退職。自分に何ができるかを考えて、起業してシステムの受諾開発をしながら、プログラミング教育を行う団体を立ち上げた。

「独立は、子どもにプログラミングを教えたいというところから始まっています。もともとはIT関連の仕事を辞めて農業をしようと思っていました。でも、震災後にゆっくりと考えてみると、コンピュータしかないのかなって感じがあって」

 プログラミング教育の活動では、面白くなければすぐに顔に出る子どもたちを相手に、興味を持ってもらう工夫が最も難しかったと話す砂金さん。印象に残っているのは、子どもたちが必要に応じて高度な内容でも気にせずに学んでくれたことだ。

「例えば、ゲームを作る中でボールを弾ませるプログラムがあって、三角関数が必要なのですが、小学生の子が覚えたいと言ってくれたことは嬉しかったです。必要だからそのやり方を知って、それが三角関数だったという流れができるのが大事だと思っています」

 6年間のプログラミング教育の実践を通してノウハウがたまってきた砂金さんは、次のステップを踏み出していく。

面白いプログラミング教材をより安価に子どもたちに使ってほしい

 2018年、砂金さんは株式会社あ×4を立ち上げ、これまでよりも一歩踏み込んで製品開発まで手掛けるようになった。

 その理由のひとつが、現在市場に出回るプログラミングの教材の価格だ。10万円以上するコンテンツもあり、一般の消費者ではなかなか手を出しにくい。砂金さんはその状況を変えたいという。

「3、4年前に、プログラミングが必要だということをオバマ大統領や安倍首相が言いはじめて、一気に加熱して色々な製品が出てきた。子供たちにどのように教えようかという視点で製品を使ってみたのですが、面白いけど高かったり、安いけどちょっとしたことしかできなかったり、そういうことがあってモヤモヤしていました。そこで、(自分で)作ろうかと」

 JoinToyは、専用パーツが4,000円、拡張パーツは500円での販売を想定。非常に安価なことが特徴だ。「(おもちゃを)壊して直すことによって得られる知識がたくさんあった」という砂金さん。安価なため子どもたちがパーツを分解して学びやすいのも大きな利点となっている。他にも、友達と一緒にプログラミングができたり、母国語でプログラミングできたりと、砂金さんの理想が詰めこまれた製品になる予定だ。

「プログラミングを学ぶのではなく、プログラミングで何かを学ぶ」

 JoinToyを通して子どもたちに伝えたい思いは何か。砂金さんは、「プログラミングは道具でしかない」という。プログラミング教育でも、子どもたちがただカリキュラムをこなすだけではなく、そこで与えられる問いを超えていかなければ意味がないのだ。

「自分の身の回りのことをどういう風によくしていくかというのが本来考えるべきことで、そのためにプログラミングという手段がすごくいいから、今みんなでやろうという流れになっている。いってみれば、エクセルの使い方を学ぶというより、エクセルで何をしたいかを自分で考えられるようにしたほうが僕は重要だと思っていて、そっちに注力してもらうようにしたいんですよ。そういったコンテンツをずっと作りたかったんですね」

 目下の目標はJoinToyのリリースだ。「早く製品を出して、色々な人に試してもらいたい」という。最後にJoinToyで実現したい世界観を聞いた。

「プログラミングで萌えられるような子達が増えてくるといいかなと思いますね。今の製品で、できなかったことができるようになる、なれるようになるというところには、持っていきたいと思っています」

 

【プロフィール】

砂金よしひろ
株式会社あ×4 代表取締役社長

地元企業にシステムエンジニアとして勤務後、2012年に独立。システムの受諾開発などを行いながら、プログラミング教育に取り組む。2018年7月にあ×4を起業。現在、JoinToyの開発を行っている。

【LocalBook編集部後記】

 「『あ×4』という名前は、『ああああ』というゲーム好きな人の中ではちょっとした有名な『勇者の名前』(笑)からつけました」と話す砂金さんは、終始笑顔で子供の教育と地元仙台の思いを語ってくれました。どんな時でも笑顔を忘れない砂金さんからは、人としての本当の強さを感じ、実現したい世界観がそう遠くない未来に叶うのだろうなとインタビューを通して私も思いました。

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