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【TOHOKUイノベーター】埋もれた情報を発信し人々の認知の多様化を目指す 合同会社イーストタイムズ代表 中野宏一さん

 今回インタビューに応じてくれたのはローカルの情報発信に注力している合同会社イーストタイムズ代表の中野宏一さん。大学院では法学・政治学・公共政策といったパブリックセクターを学んでいたが、新聞社やITベンチャーでの経験をもとに仙台で起業に至った。そんな中野さんに起業やローカルに対する思いを語ってもらった。

埋もれた情報を発信し人々の認知の多様化を目指す 合同会社イーストタイムズ代表 中野宏一さん 写真

合同会社イーストタイムズ代表 中野宏一さん

 

ローカルから情報を発信する

――会社の事業について教えてください。

 現在では主にVR-PR、ブランディング・プロモーション、自社メディア運営の3つの軸で事業を展開しています。VR-PRは数々の事例で培った360度VR動画制作の技術と、SNS拡散やメディア露出の知見を掛けあわせ、「話題になる」360度VR動画を制作するだけではなく、そのプロモーションまで総合的にサポートします。ブランディング・プロモーションは、ニュース制作で培った取材力で地方自治体や企業の魅力を取り出し、切り口を与えることで、これまで振り向かれていなかった「素材」を大きな話題や集客につなげます。メディア運営では、自社運営ニュースサイト「TOHOKU360」でローカルの物語を全国・世界に発信。新聞社が持っていた「取材力」と情報発信に責任を持つ「校閲機能」を土台に、世界中のローカルをニュースでつなぎます。

 

起業への道のり

――学生時代は何をされていたのですか?

 大学と大学院生時代はパブリックセクターを勉強していました。その当時、ビジネスにあまり興味はなく、「いかにして社会を動かしていくか」を考えていました。国際政治に関心があり、特に紛争解決について学んでいましたね。将来は国際機関に行きたいと考えて勉強していました。その中で大学院生時代、朝日新聞が契約社員を募集していたので興味を持ち、朝日新聞で働きはじめました。動機は情報を扱う仕事をしたいからでした。当時学んでいた国際政治の「金と軍事力によって世の中が動く」という考え方は、情報という観点が抜け落ちているのではと感じたからです。仕事は校閲を3年間担当しました。その後、次に何をしようかと考えたとき、新聞社にそのまま入社するという選択肢もありましたが、しませんでした。3年を通して大メディアの限界を感じたからです。ネットが普及した今、新聞など紙媒体を買わなくても情報を得ることができるようになりました。そのような中で紙媒体が売れ続けるのは難しい。変えるにしても紙媒体に頼ったビジネスモデルを反転させるのはなかなか厳しいと考えたのです。

――大学院修了後は何をされたのですか?

 大学院を修了後はTwitterのツイートを分析するITベンチャーで1年間働きました。世論に関心があったからです。ネット選挙が話題になったとき、デイリーで世論を分析するソフトウェアをチームメンバーと開発し、メディアにも取り上げられて、短期間で多くの利益を生みました。情報は求める人に適切な形で提供すれば、ビジネスになると感じましたね。ここでは、ソーシャルメディアの経験やネットビジネスでやっていけるという実感を得ることができました。

――ITベンチャー退社後に起業されたのですよね。

 退社後は次に何をしようかとアメリカに行ったりもしましたが、東北にいたとき、新聞社やベンチャーで働いた経験がある今の自分であれば、東北やローカルの情報を発信する力を持っていると気づいたのです。そこで、東北の観光局などに電話をかけて個人的に仕事を取っていました。そうした中で、起業仲間だった安藤という者がYahoo!ニュースと契約することができ、2015年、一緒にイーストタイムズを起業しました。事業内容はYahoo!ニュースの記事を書くことです。大きな裁量が与えられ、たくさんのコンテンツを書いているうちに、ローカルニュースの需要が大きいことに気づきました。その流れで立ち上げたのが「TOHOKU360」というメディアです。創業時から現場主義のインターネットメディアの確立を目指していました。現在は、メディアの運営は安藤が、ビジネスサイドとして発展していたイーストタイムズの運営は私が行っています。パブリックポリシーを学んでいた私は、NPO団体などの形態にはやれることに限界を感じていたので、ビジネスとして情報を発信しようと考えました。

 

新しいビジネスモデルを作り出す

――ビジネスが大切だと思われた理由について教えてください。

 ビジネスこそが公共政策を達成する最大の手段だと気づいたからです。キャリアチェンジした理由もここにあります。最初の話にもつながりますが、報道機関やメディアという産業を維持するためには新しいビジネスモデルが必要だと思っています。新聞社がやっていること自体は素晴らしいことです。新聞社が行っている小さな人々の暮らしを発掘して発信するという行為は、新聞社の今のビジネスモデルが破綻した後もつながなければいけない。だから、ビジネスモデルを新しく作り出すことが僕のひとつの使命だったのです。

 

ローカルは世界の最前線

――ローカルのルーツについて教えてください。

 大きく3つあります。1つ目は祖父母が秋田・湯沢の600年続く農家だったことです。そこには素晴らしいものや人や場所がたくさんあるにも関わらず、発信されていない現状があります。これらを発信したいと思いました。2つ目は大学時代に働いた新聞社でローカル面を担当したこと。この経験がローカルに着目するひとつのきっかけとなりました。3つ目は起業仲間が仙台にいたことです。このように様々なルーツがローカルにはあります。それから、グローバル化の進展で、ローカルは世界の最前線になったと思っていることもありますね。常にローカルが世界中の最前線であるという意識を持って動いていると、逆に東京よりも先進的な考え方を持ち得ると思うのです。

――起業家として東北の魅力や課題についてはどのようにお考えですか?

 東京に比べて東北というフィールドはイノベーションを起こしやすい、起業をしやすい場所だと思います。特徴はスペースの広さ。つまり、あまり邪魔をされないし、目立つということです。東京にはいろいろな障壁があるし、頑張っている割に同じようなことをしている人が多いので目立ちません。それに加えて、東京でイノベートしても現状に満足している部分が結構あるので、大勢と違う方向に行って評価してもらうのは相当難しい。しかし、東北は全体的に衰退しているので、大勢の方向に行ったらそのまま衰退しちゃうんですよ。そういう課題を抱えています。だからこそ大勢からターンアラウンドする必要性を地域コンセンサスとして持っている地域だと思うのです。このような危機感を持った地域では、私みたいに社会のメインストリームではない方向を選ぶ人間が歓迎されたりします。こういう危機感が、起業家の私にとっては心地良い環境なのです。

 

人々の認知を多様化させたい

――今後の展望はありますか?

 地域コンテンツの開発や地域情報を発信する人材の育成に注力する予定ですが、大前提として、すべては「埋もれた情報を発信し、人々の認知にポジティブな影響を与えていきたい」という思いがあります。そのためにPRとブランディングに注目しています。PRは関係性構築の技術、メディアを通じて関係性を構築する技術ですが、日本のPR業界はそれを十分にできていないと考えています。現在のブランディング・プロモーションはマスメディア依存型で、ネット登場以前のやり方だと感じます。それをマスメディアに依存しないフラットなものにしたいです。価値を作るブランディングとそれを認知させていくプロモーションを企業とローカル、両者に対して行っていきたいですね。情報を使って人々の認知を多様化させるのが私の究極のやりたいことです。人は受け取る情報を通じて世界観を作っていきます。ここに注目すると地方は良い例で、東京発信の情報ばかりが溢れていて、みんな東京の方ばかりを向いてしまう。地方の活性化はひとつのテーマですが、ローカルに限らず埋もれた情報を発信して、人々の認知を多様化させていきたいと思っています。

【プロフィール】

中野 宏一(なかの こういち)
秋田県湯沢市生まれ、埼玉県所沢市出身。東京大学大学院在学中から朝日新聞で校閲記者として働く。大学院修了後、2013年株式会社プラスアルファ・コンサルティングに入社し「選挙向けソーシャルメディア分析サービス」の作成に携わる。退社後の2015年に仙台市でイーストタイムズを設立。現在はブランディングやプロモーション事業等を手掛けている。

【LocalBook編集部後記】

 今回取材させていただいた中野さんは「埋もれた情報の発信を通じて人々の認知にポジティブな影響を与えていきたい」という熱い思いを持っています。中野さんの事業を通して、私もまだ知らない宮城県の魅力、まだまだ広まっていない東北の人・モノがこれからどんどん日本中に、世界中に広がっていく、そんなイメージを持つことができた取材でした。

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