目指すは気仙沼・南三陸地域の人事部! 地元企業と東北の若者をつなぎ地域の未来を盛り上げる「気仙沼人事部」とは

 気仙沼・南三陸地域の慢性的な若手人材不足を解決することをミッションに、採用イベントやweb上での情報発信を行っている「気仙沼人事部」。地域と東北の若者に寄り添いながら、両者をつなぐサービスを展開している。今回は気仙沼人事部の部長を務める加藤 菜々子氏に、気仙沼・南三陸地域の人材課題や気仙沼人事部の取り組みについてお話をうかがった。

 少子高齢化に伴う労働人口の減少に直面している日本。そんな中で、首都圏の大企業と比較すると知名度の低い地方企業の多くは「人材が採用できない」という課題を抱えている。また学生側も「生まれ育った身近な地域を盛り上げたい」という気持ちはあるものの、新卒採用を行っている地方企業と出会う機会を得られないまま就職先を決めてしまうことも多い。

「地元の企業と学生が出会う場を作ることで、学生のキャリアの可能性を広げるとともに、気仙沼・南三陸地域を盛り上げるきっかけを生むことができないか」。気仙沼人事部は、建設業を営む株式会社菅原工業(宮城県気仙沼市)の代表を務める菅原 渉氏のそんな思いが契機となって生まれた新規事業プロジェクトチームだ。

2020年のプロジェクト発足以来、新卒2〜3年目の若手メンバーが中心となって気仙沼地域の企業の採用課題を解決するための取り組みを行っている。

気仙沼・南三陸に寄り添った採用プラットフォームを作る

 現在気仙沼人事部では、宮城県内の大学生と気仙沼・南三陸地域をつなぐ出会いの場を創出することをミッションに「S→KIP(スキップ)」を運営している。気仙沼人事部の主な活動内容は、企業と学生をつなぐマッチングイベント、ホームページやSNSを活用した情報発信、企業向けの採用コンサルティングなどだ。気仙沼人事部 部長の加藤氏によると、これらの活動の根幹には「気仙沼・南三陸地域の企業に合った採用のあり方を考えたい」という思いがあるという。

地方の中小企業が抱える採用課題として、いわゆる一般的な新卒採用サービスを利用しても、首都圏の大企業やベンチャー企業と比較されてしまい、なかなか学生の目に留まらないことがある。しかし、地域だからこそ実現できる仕事・キャリアの魅力もあるはず。それらの魅力を伝えるには、その地域・その企業に合った採用のプラットフォームが必要だ。S→KIPが目指しているのは地域中小企業に寄り添った採用プラットフォームである。

現在、気仙沼人事部が特に力を入れて取り組んでいるのは、企業と学生をつなぐマッチングイベント「S→KIP(スキップ)」の取り組みだ。

イベント応募フォームforms.gle/f3QKRFUxDQbtDZtv9

仙台を中心とした大学3年生をメイン対象としているS→KIPは、気仙沼人事部設立以来からの取り組み。人対人として交流を深めることで、地方・中小企業で働く人の熱量やキャリアの面白さを肌で感じることができるのが魅力のイベントだ。毎回学生10名ほど、企業3社ほどが参加しているという。

マッチングイベントでは気仙沼・南三陸の魅力的な企業の企業紹介や、地域の最前線で活躍する経営者や社員と気軽に会話や質問ができる場、実際の企業の課題を題材にしたグループワークなど、さまざまなプログラムが用意されている。さらに、気仙沼産の海の幸や食材を楽しみながら社会人や人事担当者とフラットに交流できる交流会も合わせて開催される(※)。
※新型コロナウイルスの状況を踏まえて、内容が変更になる可能性あり。

一般的な大規模就活イベントとは異なり、少人数でなごやかな雰囲気の中で行われる本イベントは、学生と地元企業がじっくり相互理解を深めるのにぴったりだ。実際に、これらの取り組みをきっかけに地元企業の魅力を知り、本選考やインターン生としてのマッチングなどの実績も生まれているという。

気仙沼人事部を支える若手メンバー

 気仙沼人事部は、菅原工業の新卒1〜3年目の若手が中心となって運営されている。気仙沼人事部 部長でありS→KIPの創業メンバーである加藤氏も、現在新卒3年目の若手人材だ。「気仙沼で東日本大震災を経験したこともあり『気仙沼を盛り上げるために何か自分ができることはないか』と思い、ビジネスプランを考えていました。そんな中で菅原から気仙沼人事部の構想を聞き、その思いに共感して入社したんです」。加藤氏は学生時代を振り返る。気仙沼人事部に所属するメンバーの多くが、気仙沼や南三陸地域を盛り上げたいという思いを持って活動している。
気仙沼人事部の特徴として、学生と比較的近い年齢のメンバーが多いからこそ、現在の学生の行動特性を踏まえた上でサービスを展開している点がある。特に注目すべきなのが、ホームページやInstagramを活用した情報発信だ。

気仙沼人事部のホームページでは気仙沼・南三陸地域の企業50社以上に取材を行い、魅力的な地元企業や経営者の情報を発信している。またInstagramでは「気仙沼で働く若者」にスポットを当て、気仙沼を選んだ理由や実際に暮らしてみてのギャップなど、仕事と暮らしのリアルを聞くインタビューを掲載している。

多くの学生は気仙沼・南三陸地域の企業で働くイメージがわかないという。リアルな情報発信を行うことで、地元企業や地域での生活を身近に感じてもらうのが狙いだ。S→KIPではメンバーの若い感性を生かして、学生にとって魅力的なコンテンツやイベントが日々企画されている。

このような学生に寄り添ったオンライン上の情報発信が実を結び、2022年5月現在S→KIPの公式LINEは200名近くもの学生が登録している。地域で働くことに興味がある学生を集めるプラットフォームとしての地位を着実に築いているようだ。

地域のステークホルダーと連携しながら地方採用を変える

 「今後も地域中小企業の採用プラットフォームを目指し、より多くの地元企業にS→KIPの取り組みを広げていきたい」と話す加藤氏。将来的には行政や金融機関と連携した採用支援の仕組みも考えているという。

また、気仙沼・南三陸地域の企業では、若手人材の不足に危機感を持って取り組みを行っている企業と、課題を感じながらも若手人材の採用にまでなかなか手が回っていない企業との二極化が進んでいる。「採用に積極的ではない企業に対しても若手人材雇用の重要性やメリットを伝え、気仙沼・南三陸地域全体の人材雇用を盛り上げていきたい」と意欲を語ってくれた。

地域への思いをバックグラウンドに持つ若者たちが、意欲的に挑戦を続けていることが伝わった。気仙沼人事部をきっかけに地元企業とつながる若手人材が増え、気仙沼・南三陸地域が今まで以上に活気づくことを期待したい。

★今後の開催予定について★
●S→KIP〜知って、出会って、ミライ広がる〜
(日時)
・2022年7月9日(土) 14:00-17:30
・2022年8月20日(土) 14:00-17:30

(場所)
仙台駅周辺

(対象)
大学3年生(1,2,4 年生も歓迎!)

(服装)
自由(私服参加 OK!)

※大学生の皆さまの参加費は無料です。また、新型コロナウイルス感染症の状況により、内容や開催方法を変更する場合があります。

イベント応募フォームforms.gle/f3QKRFUxDQbtDZtv9

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【LocalBook編集部後記】
新卒3年目という若さにもかかわらず、新規ビジネスの責任者として地方課題の解決に奮闘する加藤さん。加藤さんのお話を聞いて、ファーストキャリアで「地方企業」というフィールドを選ぶことの可能性の大きさを感じました。地方には、自分の個性や思いを生かしながら働ける会社がたくさんあります。地方創生や地域の活性化に興味のある学生さんは、ぜひS→KIPのイベントに参加して「地方で暮らし、働くこと」の魅力を体感してみてはいかがでしょうか。(ライター:鈴木 智華)

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