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【TOHOKUイノベーター】「新しい就労支援で、障がい者の人たちとともにわくわくする未来を作る」障がい者就労支援事業を営む BIG HELLO 佐藤 大輔さん

 今回インタビューに応じてくれたのは、福島県郡山市で障がい者就労支援事業を営む一般社団法人BIG HELLOの佐藤大輔さん。

運送会社を経営し、自社で障がい者を雇用した経験もある佐藤さん。障がい者との関わりを持つ中で「本質的な自立と支援を実現できる場」を目指して2020年BIG HELLOを立ち上げ。立ち上げ以来、あらゆる人が自分の能力を活かして自立できる社会を目指して、障がい者の方と地元企業とのマッチングを進めています。

今回は佐藤さんに、BIG HELLO創業のきっかけや事業内容、将来のビジョンについて話を伺いました。

一般社団法人BIG HELLO代表の佐藤大輔さん


障がい者の方たちと共生する社会を当たり前のものにしたい

-どんな学生時代を過ごしましたか?

 生まれてから大学時代までを福島県で過ごしてきました。小学生の時に出会った「ブラックジャック」という漫画に出会い、人を助けるという仕事の素晴らしさに感銘を受け、将来はお医者さんになりたいと思っていました。高校時代に医者になる夢は諦めてしまったのですが「人を助ける仕事って格好いいな」という思いは今でもずっと持ち続けています。私が今取り組んでいる就労支援事業も、「人のため」という思いで運営しています。

-大学卒業後、上京した時のことを教えてください

 大学卒業後は運送会社に入社し、6年半ほど働いていました。当時は長時間労働が当たり前の環境でしたが、会社の社長がとても魅力的な人だったこともあり、楽しく働いていました。ビジネスの面白さや奥深さ、会社のトップとしてどのように意思決定をしていけばいいのかなど、経営者としてのエッセンスを当時の社長からたくさん学ばせていただきました。

入社して6年ほど経った時に、社長から「地元に帰って自分の会社を立ち上げてみなさい」と言っていただきました。その後に福島に戻って運送会社を起業し、BIG HELLOと並行しながら現在も事業を続けています。

-障がい者支援を行いたいと思うようになったきっかけはなんですか?

 叔父がパン屋を営んでおり、小さい頃によく叔父のお店に遊びに行っていました。叔父のパン屋では障がいを持つ人が働いていました。私にとって障がいのある人とともに働いたり、コミュニケーションをとったりすることは、ごくごく当たり前の日常だったんです。

しかし社会人になってみると、障がい者の方たちは社会から一本線を引かれ、腫れ物のように扱われていることに気づきました。社会の雰囲気に違和感を感じ、私が経営する運送会社で実際に障がい者の方を雇用したことも。その中で、適切なコミュニケーションを取れば、障がいの有無にかかわらずその人の能力を引き出して活躍してもらえることを知りました。

障がいのある人だからこそ出来ることもあるのに、それが無視されて、出来ないことばかりに目を向けられてしまっている。もっと障がい者の方たちと共生する社会を当たり前のものにしていきたいと思うようになったのが、BIG HELLO立ち上げのきっかけです。

障がい者の自立と相互理解を目指した事業

-BIG HELLOでどんなことをしているのか教えてください

 BIG HELLOは「障がい者の方たちの自立を支援するための学校」のような場所です。働きたい気持ちがある障がい者の方にBIG HELLOへ入ってもらい、自分に合った仕事の種類や他者との関わり方を知ってもらいながら、最終的には一般企業に就職してもらい自立してもらうことを目指しています。

事業として取り扱っているのは障害者総合支援法に基づく就労支援サービスのひとつである「就労移行支援」と、一般企業への就職が困難な方へ働く機会を提供する「就労継続支援A型(雇用型)」です。

就労継続支援にはA型とB型(非雇用型)がありますが、B型ではより幅広い障がい者の方に働いてもらえる一方、B型の事業所で働いてもその収入だけで自立して生活するのは難しいのが課題です。しかしA型では最低時給以上の賃金をお支払いするので、しっかりとスキルを積んでいただく必要があります。BIG HELLOでは「障がい者の方の本来の自立を支援したい」という思いから、就労継続支援A型(雇用型)を採用しています。

BIG HELLOの特徴は、その人の適性を見極めるためにいろいろな仕事を用意しているところです。現在はパンの製造販売や水耕栽培、メダカの飼育、運送業務の手伝いなど、地元の会社と協力しつつ、さまざまな職業訓練をおこなっています。より多くの仕事に触れられるからこそ、この人の得意・不得意を見極めることができます。その上で最適な会社さんに紹介することで、企業・障がい者の方双方にとって幸せなマッチングを目指しています。

-就労支援をやる中で嬉しかったことはありますか?

 今まで障がい者を雇用したことがなかった小さな地元企業が、初めて障がい者の方を雇用してくれたのがとても嬉しかったです。

障害者雇用促進法により、従業員が増えて企業規模が大きくなってきた会社は一定の割合で障がい者を雇用しなければならないと定められています。そういった会社さんと障がい者をマッチングするのはハードルが低い一方で、離職率が高くなる傾向もあります。互いが認め合い共生する、そういったマッチングにはつながりにくいもどかしさも感じていました。

しかし今回マッチングした会社さんは、今まで障がい者雇用を検討したことがなかった会社。社長も最初は「そもそもうちでは障がい者の方を雇用できないのでは?」と半信半疑でした。しかし実際に働いている姿を見てもらったり、コミュニケーションをとってもらったりする中で、「雇用したい」と思っていただきマッチングしました。

採用後も「あんなことが出来るようになったよ」と、就職した方が実際に会社で活躍している姿を定期的に報告してくれます。障がい者の方の自立と、受け入れる側の理解を経た本質的なマッチングをサポートできたと実感できた出来事でした。

一人ひとり個性を認め合う社会を

-佐藤さんが今後やりたいことを教えてください

 現在BIG HELLOが受け入れているのは精神障がいの方が今は多いです。しかし障がいには精神的なものの他に、身体的なものや知的なものもあります。今後はそのような障がいのお持ちの方に対してもそれぞれの個性に合ったお仕事を見つけて、その人の力を引き出すお手伝いができたらと思います。

そのために進めているのが、職業体験のバリエーションを増やす取り組みです。指圧師やweb制作など、さまざまなお仕事のプロフェッショナルの方にお越しいただき、職業体験のワークショップを行います。周辺の福祉施設にもお声がけしながら、障がい者ができる仕事にはどんなものがあるのか模索していきたいと思っています。

-最後にメッセージをお願いします

 「障がい者」となると、一括りで区別してしまいがちになりますが、本来人間はそれぞれに個性があるもの。みんな違ってみんな良いという言葉はその通りだと思うんです。みんな同じように尊重されるべき人なんだということを伝え続けて、障がい者に対する偏見や苦手意識を少しでも無くしていきたいですね。

一人ひとり個性を認め合うという社会、共生によって互いに繁栄していく社会、こんな社会をみんなで実現できればと思っています。

(プロフィール)
佐藤 大輔

福島県郡山市出身の昭和49年11月6日生まれの47歳。大学まで郡山市で過ごし、就職を機に上京。6年半の修行を経て、地元郡山市に戻り、平成16年に有限会社ゼストを設立。現在代表取締役。有限会社ゼストは福島県本宮市に本社を構える物流サービス提供企業。埼玉県八潮市にも営業所を置き、関東と東北の架け橋として事業展開している。令和2年10月には一般社団法人BIG HELLOを設立し、障がい者就労支援事業を開始。

WEBサイト:https://bighello.shopinfo.jp/

【LocalBooK編集部後記】
 終始なごやかな雰囲気ながらも、「障がいのあるなしに関わらず自身の能力を発揮し、支え合いながら暮らしていく社会を作りたい」という佐藤さんの強い思いを感じた取材でした。佐藤さんの取り組みが広がることで、東北がどんな人にとってもいきいきと、その人らしく生きられる地域となっていきそうです。(ライター:鈴木 智華)



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