東北ならではの香りを全世界へ!「香りと女性の感性で世界をハッピーに」を掲げる株式会社グリーディーが手がけるアロマブランドとは!?
宮城県に東北発のアロマブランドがあることをご存じだろうか。株式会社グリーディーは、宮城県仙台市に本社を置き、石巻市でアロマ製品を作り、販売している。展開する商品の中には、東北ならではの素材を活用した物も多く、宮城県内のローズガーデンなど、地域と協働することで生み出された商品もある。今回、どのようにして東北初のアロマブランドを作っているのか株式会社グリーディーCEOの浜出理加さんにお話を伺った。
地方で女性が感性を活かしながら、活躍できる場を
株式会社グリーディーは、2017年にアロマテラピーの造詣が深かった浜出さんが、宮城県仙台市で創業した。今年で6年目になり、テーマには「香りと女性の感性で世界をハッピーに」を掲げる。「地方で女性が働くことにこだわっています」と話すと通り、従業員7名全員が女性の会社だ。
女性従業員が多い理由には浜出さんが独立する前に働いていた会社での経験がある。従業員の9割が女性という会社だったが、様々な業務に関わる機会が多かった半面、結婚や子育てで仕事を諦める人も多く見て来た。「自分が会社を立ち上げたら、どこにいてもあきらめずに仕事を続けられる環境を作りたかった」と浜出さんは話す。スタッフの中には、子育て中の人や家庭の事情で仙台を離れている人もいるが、家から近い石巻を拠点とした勤務、リモートワークなど、それぞれの状況に合わせて柔軟な働き方をしている。
彼女たちが活躍できるよう、浜出さんが心掛けていることがある。それは「チャレンジできる環境づくり」。「スタッフには“なんでもやってみていいよ”と言っています。自分自身も前職で仙台と東京の二拠点で輸入、企画など幅広く経験させてもらったことで、今に繋がっていると感じます。もちろん失敗することもあるけれどそこから学んで成長につながる。そんな場を作っていきたいですね」と女性が活躍できる環境への想いを語る。
雄勝ローズファクトリーガーデンとの取り組み
株式会社グリーディーの商品には東北発のアロマブランドderika(デリカ)、青森ヒバを使ったペット用のアロマソープや消臭スプレーを揃えたケアブランドDearGree(ディアグリー)などがある。
また、「東北の豊かな天然素材と人材を活用した持続可能なものづくり」を実践しており、そのうちの一つが、宮城県石巻市にある「雄勝ローズファクトリーガーデン」との取り組みだ。
雄勝ローズファクトリーガーデンは、三陸海岸の入り江に位置する石巻市雄勝(おがつ)地区にある。壊滅的な被害を被った2011年の東日本震災後に住民たちが立ち上げ、復興支援のボランティアのべ1000人以上の人たちが関わり作られてきた。
浜出さんが雄勝ローズファクトリーガーデンと出会ったのは2019年春のことだった。代表の徳永利枝さんとの対話の中で「この場所は人の善意で出来ている。だからこそ善意でお返しする」という言葉にとても心を動かされたと言う。「ガーデンは人が集まる場所になっています。存続させたいが人口を増やすのは難しい。外部からの関係人口を増やすために取り組む方々を見て、自分の経験で何か役にたてないかと思うようになりました」と浜出さんは語る。
この出会いを機に、グリーディーは、雄勝ローズファクトリーガーデンで収穫されたハーブを使ったアロマ商品を近隣の石巻市街地にある自社工房で製品化、のちに発売される「aroma journey」(以下アロマジャーニー)という商品に繋がっている。そして、ハーブの収穫は雄勝のお母さんたちが、アロマ商品の製造には石巻のスタッフがあたるなど地元の人たちが担っている。
「aroma journey」
雄勝ローズファクトリーガーデンより「育てたハーブを何かに活用できないか」と相談を受けたことをきっかけに生まれたのがアロマジャーニーだ。
アロマジャーニーは、ミント、ローズ、ラベンダーの3種類のアロマミストで、雄勝ローズファクトリーガーデンで育ったものを使っている。「頑張るあなたの24時間を支えるレスキューアロマスプレー」をコンセプトに、朝の寝起きや気分をスッキリさせたい時はミント、日中に気分を明るくしたい時はローズ、夜の就寝前に気分を落ち着かせたいときはラベンダーというように、時間帯や気分とリンクさせ、ストーリー性を持たせている。
乾燥したハーブは、石巻市内のグリーディーの工房へ。チンキ(※ハーブをアルコールに漬けて有効成分を抽出したエキスのこと)を作り、スプレーにとじこむ。作られた商品は、オンラインショップや県内外の販売店などで販売され、収益の一部はガーデンに寄付されることで、地域へ利益が還元される商品となっている。
「この商品を通して、雄勝という場所や働く人たちのことを知ってもらいたい」と浜出さんは言う。アロマジャーニーは、2019年に第6回おみやげコンテストで入賞している。ただ、「コンセプトが分かりずらいので、もっと伝わるようにした方が良い」などの指摘を受けたこともあり、急遽リニューアルを行い、現在の商品となっている。お客さんからの反応は、スタッフのモチベーションにつながっており、浜出さんは、「自分たちの得意な分野で役に立てることがとても嬉しい」と笑顔で話している。
女性ならではの感性で、新たな価値を提供する
グリーディーでは、雄勝ローズファクトリーガーデンの他、仙台市郊外の秋保(あきう)地区にあるワイナリーと協働したコラボレーション商品「AKIU Style(アキウスタイル)」や、青森ヒバの蒸留水を利用した消臭・除菌スプレー「HIBA SPRAY(ヒバスプレー)」など東北に根ざした香りを発信している。地域の人たちと協働でその土地ならではの商品をプロデュースする根幹には、働く女性への想いと東北地域への想いがある。
浜出さんは会社の未来について、次のように話す。「例えば、生産者であれば自ら育てたものを提供できます。が、そうではない私たちは、女性ならではの感性で、生産者であるパートナーと一緒に、商品を創り出すことで新たな価値を提供することにこだわっていきたい。そして会社のテーマでもある、“香りと女性の感性で世界をハッピーに”をモットーに、様々なものをこの東北で作り出していきたいですね」。株式会社グリーディーと浜出さん、今後の東北での活動にぜひ注目してほしい。
【プロフィール】
株式会社グリーディー
2017年、仙台市青葉区で創業。ホテルを対象とした香りのブランディングからスタートし、東北発のアロマブランド「derika」、ペット用のアロマブランド「DearGree」を手掛ける。また、雄勝ローズファクトリーガーデンや秋保ワイナリーと協働でアロマ商品を生み出している。2022年には、直営コンセプトショップ+Naturallyをオープン。
【編集部後記】
私が株式会社グリーディーに興味を惹かれたのは、雄勝ローズファクトリーガーデンや秋保ワイナリーといった、地域の人たちと協働で、そこならではの商品を生み出している点でした。「コラボレーション」と言葉では簡単に聞こえますが、地域事情を知り、その土地の人たちと折り合って一つの物を創り出すことは時間を要し、並大抵のことではなかったと思います。柔軟性を持ち、人の輪を広げ、繋げていけるのは女性ならではの強みなのではないかと、強く思いました。そして、女性スタッフの力を引き出せるのは、浜出さんがおっしゃっていた「チャレンジできる環境づくり」が土台にあるのだと感じました。(鈴木千絵)